「おい！ どうなってるんだ！」
一方、ギース達はＡ級のクエストを受けて、ダンジョンに潜っていた。そして、そのダンジョンに苦戦していた。
Ｓ級パーティであるギース達はＡ級のクエストを過去に何度も受けていた。そんなクエストの中でも、ギルドからＢ級よりのＡ級のクエストであると説明を受けていた。
だから、本来であればギース達のパーティがこのクエストに苦戦することなどあるはずがないのだ。
本当にＳ級の力があれば。
「おい、キース！ 後方支援ならもっと援護しろよ！ ゴブリン達の矢が邪魔でまともに攻撃できないぞ！」
「はぁ？！ そんなの勝手に避けなさいよ！ 今までだってそうしてたでしょ！？」
「避けるって、避けてたらまともに攻撃なんかできないだろうが！！」
ギース達はゴブリンの群れに遭遇していた。群れと言っても所詮はゴブリンだ。いくら、ゴブリンの親玉的なクイーンゴブリンやキングゴブリンがいても手を焼く相手ではない。
いつもなら問題なく処理をすることができていたはずだった。だから、ギース達は自分達でも何が起きているのか分からなくなっていた。
各々が『いつもよりも動きづらい』そう感じながら、いつもの自分に与えられている役割を果たそうとしていた。
「おい、ギース！ 早くキングゴブリンをどうにかしてくれ！ こいつ、やけに力がつよい！」
「分かってる！ って、くそっ！ ゴブリンのくせに矢継ぎ早に攻撃してきやがって！」
タンク役のエルドが、盾で自分の二倍ほどある魔物の攻撃を防いでいた。しかし、本気で狙いを定めて数度打ち込まれると、さすがにタンク役と言っても体力を消耗されていく。
今までキングゴブリンに連続で力任せの攻撃をされたことはなかった。今までの戦い方が身についているエルドは、相手の隙ができるタイミングを見計らっていた。
魔物には必ず隙ができる。そんな間違った常識のもと戦ってきた他のメンバーもその隙を待ち続けていた。
戦闘中の魔物が隙を見せることなど、滅多にないことを知らないのだ。これまでその隙を意図的に作っていた者が欠けているに誰も気づくかず、ただ一方的に殴られ続けている状況だということにも気づけないでいた。
「モモ！ 体力が持たなくなってきた！ 回復魔法を頼む！」
「か、回復魔法をそんな簡単に使わせないでください！ そんなポンポン使ってたら、魔力がすぐに底を尽きますよ！」
回復魔法は体力が尽きたくらいで使う魔法ではないことは、エルドも分かっていた。しかし、それ以上に体力を回復させないとじり貧になって負けてしまう。そんな予感があったのだった。
「くっ！ やっぱり、何かおかしいぞ、ギース！」
「何がって、なにがだ！」
ギースもいつもと何かが違うことには気がついていた。それでも、たとえ自分達がどんな状況にあろうともゴブリン相手に苦戦するはずがない。
そう思い込んでいるギースは、気づかないフリをすることしかできなかった。
「体力の減りの速さ、魔物の動きが活発的過ぎること、あげたらキリがない！」
「やっぱりそう思う？ 私もそう思ってた！」
ギースの代わりにキースがエルドの言葉に反応した。互いに切羽詰まった状況で、現状を分析したエルドは言葉を続けた。
「やっぱり、そう思ってたか！ ……もしかして、なにかしら大規模な魔法が使われてるんじゃないか？」
「魔法、だと？」
「ああ、何者かがこのゴブリン達を強化したんだ！ そうでなくては、これだけ苦戦する訳がない！」
単純な力不足。それを疑う者は今この場にはいなかった。むしろ、ずっと感じていた違和感がようやく解消されたような気さえしていた。
「ちくしょうっ、そういうことか！」
「それも、俺たちＳ級パーティが苦戦するほどの強化だ！ くそっ、気づくのが遅すぎた！ さすがに、これだけ体力が消耗した後だと分が悪い！ 一旦、退くべきだ、ギース！」
「退くだと？ いや、これはＡ級のクエストだぞ！ それを失敗して引き返せって言うのか！」
「こ、このままじゃ全滅するぞっ！ はっ、はぁっ、俺だって、いつまで攻撃を防ぎきれるか分からん！」
「くっ……て、撤退なんかできるわけ……」
ギースは歯を食いしばって、現状を否定しようと必死に考えた。そして、考え抜いた結果、一つの答えを導き出した。
「これは失敗じゃない。ギルド側のクエストの管理不足だ」
「ぎ、ギース？」
「これはＡ級のクエストではなく、Ｓ級のクエストだったってことだ！ 嘘を吐かれたんだから、失敗なんてことはないはずだ！ なぁ、そうだろ！？」
「ギース、あんた……」
ギースは自分達がＡ級のクエストを失敗したことを必死に認めようとしなかった。その結果、都合よく現状を受け入れて撤退をすることの口実を作ったのだった。
自分達がＳ級パーティなのだから、Ｓ級のクエストを達成できてもおかしくないということに気づくことさえできず、ただ自分を正当化しようとしていた。
「撤退するぞ！ それで、ギルドに文句を言い行ってやる！！」
ギースはどこにぶつけたらいいのか分からない感情をぶつける場所を見つけて、Ａ級のクエストを撤退することにしたのだった。
どうやら、アイクが抜けたことで落ちたのは戦力だけでは済まなくなりそうだった。
一方、ギース達はＡ級のクエストを受けて、ダンジョンに潜っていた。そして、そのダンジョンに苦戦していた。
Ｓ級パーティであるギース達はＡ級のクエストを過去に何度も受けていた。そんなクエストの中でも、ギルドからＢ級よりのＡ級のクエストであると説明を受けていた。
だから、本来であればギース達のパーティがこのクエストに苦戦することなどあるはずがないのだ。
本当にＳ級の力があれば。
「おい、キース！ 後方支援ならもっと援護しろよ！ ゴブリン達の矢が邪魔でまともに攻撃できないぞ！」
「はぁ？！ そんなの勝手に避けなさいよ！ 今までだってそうしてたでしょ！？」
「避けるって、避けてたらまともに攻撃なんかできないだろうが！！」
ギース達はゴブリンの群れに遭遇していた。群れと言っても所詮はゴブリンだ。いくら、ゴブリンの親玉的なクイーンゴブリンやキングゴブリンがいても手を焼く相手ではない。
いつもなら問題なく処理をすることができていたはずだった。だから、ギース達は自分達でも何が起きているのか分からなくなっていた。
各々が『いつもよりも動きづらい』そう感じながら、いつもの自分に与えられている役割を果たそうとしていた。
「おい、ギース！ 早くキングゴブリンをどうにかしてくれ！ こいつ、やけに力がつよい！」
「分かってる！ って、くそっ！ ゴブリンのくせに矢継ぎ早に攻撃してきやがって！」
タンク役のエルドが、盾で自分の二倍ほどある魔物の攻撃を防いでいた。しかし、本気で狙いを定めて数度打ち込まれると、さすがにタンク役と言っても体力を消耗されていく。
今までキングゴブリンに連続で力任せの攻撃をされたことはなかった。今までの戦い方が身についているエルドは、相手の隙ができるタイミングを見計らっていた。
魔物には必ず隙ができる。そんな間違った常識のもと戦ってきた他のメンバーもその隙を待ち続けていた。
戦闘中の魔物が隙を見せることなど、滅多にないことを知らないのだ。これまでその隙を意図的に作っていた者が欠けているに誰も気づくかず、ただ一方的に殴られ続けている状況だということにも気づけないでいた。
「モモ！ 体力が持たなくなってきた！ 回復魔法を頼む！」
「か、回復魔法をそんな簡単に使わせないでください！ そんなポンポン使ってたら、魔力がすぐに底を尽きますよ！」
回復魔法は体力が尽きたくらいで使う魔法ではないことは、エルドも分かっていた。しかし、それ以上に体力を回復させないとじり貧になって負けてしまう。そんな予感があったのだった。
「くっ！ やっぱり、何かおかしいぞ、ギース！」
「何がって、なにがだ！」
ギースもいつもと何かが違うことには気がついていた。それでも、たとえ自分達がどんな状況にあろうともゴブリン相手に苦戦するはずがない。
そう思い込んでいるギースは、気づかないフリをすることしかできなかった。
「体力の減りの速さ、魔物の動きが活発的過ぎること、あげたらキリがない！」
「やっぱりそう思う？ 私もそう思ってた！」
ギースの代わりにキースがエルドの言葉に反応した。互いに切羽詰まった状況で、現状を分析したエルドは言葉を続けた。
「やっぱり、そう思ってたか！ ……もしかして、なにかしら大規模な魔法が使われてるんじゃないか？」
「魔法、だと？」
「ああ、何者かがこのゴブリン達を強化したんだ！ そうでなくては、これだけ苦戦する訳がない！」
単純な力不足。それを疑う者は今この場にはいなかった。むしろ、ずっと感じていた違和感がようやく解消されたような気さえしていた。
「ちくしょうっ、そういうことか！」
「それも、俺たちＳ級パーティが苦戦するほどの強化だ！ くそっ、気づくのが遅すぎた！ さすがに、これだけ体力が消耗した後だと分が悪い！ 一旦、退くべきだ、ギース！」
「退くだと？ いや、これはＡ級のクエストだぞ！ それを失敗して引き返せって言うのか！」
「こ、このままじゃ全滅するぞっ！ はっ、はぁっ、俺だって、いつまで攻撃を防ぎきれるか分からん！」
「くっ……て、撤退なんかできるわけ……」
ギースは歯を食いしばって、現状を否定しようと必死に考えた。そして、考え抜いた結果、一つの答えを導き出した。
「これは失敗じゃない。ギルド側のクエストの管理不足だ」
「ぎ、ギース？」
「これはＡ級のクエストではなく、Ｓ級のクエストだったってことだ！ 嘘を吐かれたんだから、失敗なんてことはないはずだ！ なぁ、そうだろ！？」
「ギース、あんた……」
ギースは自分達がＡ級のクエストを失敗したことを必死に認めようとしなかった。その結果、都合よく現状を受け入れて撤退をすることの口実を作ったのだった。
自分達がＳ級パーティなのだから、Ｓ級のクエストを達成できてもおかしくないということに気づくことさえできず、ただ自分を正当化しようとしていた。
「撤退するぞ！ それで、ギルドに文句を言い行ってやる！！」
ギースはどこにぶつけたらいいのか分からない感情をぶつける場所を見つけて、Ａ級のクエストを撤退することにしたのだった。
どうやら、アイクが抜けたことで落ちたのは戦力だけでは済まなくなりそうだった。
