『こんばんは、めーるしました』

 とりあえず、こっちの素性は隠してメッセージをする。
 こっから出会い系、勧誘、闇バイトなんかに繋がる可能性もあるからな……。

 情報が金になる時代だ。
 ぼさっとしてたら首を狩られるぞ。

『めーるありがとうございます。それではちょっとした試験をおこないます』

 は? 試験? なんでウエメセ。どういう立場だよ、こいつ……。
 やっぱ闇バイトか……?

 でも、ここは少し付き合うか。

『試験ですか~~おてやわらかにおねがいします』

『森田というおとこをしっていますか?』

 即返信。
 打ち込み早いな……。
 森田……?
 誰だ?

『森田という男は、ほしのかずほどいるでしょう。もっとくわしくおしえてください』

 なんだろう、クイズだろうか?
 とりあえず一般的に思うことを返信する。

『森田九作というおとこです』

「えっ!? もりたきゅうさくぅ!?」

 驚きで声が出て、ビール缶を落としそうになった。

 ……びっくりしたな。
 私は知っている。
 この男を……。

 森田九作を……。
 
 しかし、即答して大丈夫なんだろうか。
 私は少し考え込んでしまった。

『どうですか? しっているか? イエス オア ノー こたえて』

 うわ……返事を促されてしまった。
 此処で知らないと言えば終了になりそうな雰囲気を感じて焦って返信をする。

『しっています』

『どんなひとかこたえてください』

 うわ……これはまじもんの試験だ。
 そりゃあ、これを突破するような人間はそうそういないだろうな。
 私は一応、検索をしてみる。
 が、森田九作郎という若手プロ野球選手の記事やプロフばかり引っかかる。
 でもこいつが求めているのは、野球選手ではない……。

『けんきゅうしゃ。オカルトやまじゅつ、そんなものをけんきゅうしていた男』

 私は心臓がドキドキしていた。
 もう恐ろしい事に足を突っ込んだ気がした。
 それは森田九作が、本当に不気味な男だからかもしれない。

 私が三流オカルト誌の記者になった6年前。
 新人だった私に強烈な思い出を残した奇天烈博士。
 あの不気味なジジイの名前をまた聞く事になろうとは……。
 
『ありがとう。せいかいです。あなたをしんじたい。さつじんじけんをしっています』

『どんなじけんなの?』

『森田九作博士はころされました。やまのおくで、やしきで』

 えっ……。
 
『だれにころされたの? やしきはどこにあるの?』

『橘サエ子というおんな』

 橘サエ子……聞いた事はない。
 女に殺されるだなんて、あのジジイ……。
 色恋じゃないだろうね。

『なぜ、けいさつにつうほうしないの?』

『けいさつはこわい』

 んー?
 自分にも何か非があるんだろうか。
 しかし、ここで警察に行くことを勧めるより何かネタがほしい。
 
『では、くわしいはなしをおしえてください』

『わたしをたすけてくれる?』

 殺人事件を知っていて、助けを求めている……。
 共犯者か、もしくは被害者?
 どういうことだ?

『まずは、あなたがなにをしっているのかおしえてください』

『したいのあるばしょをしっている』

 ゾクッとした。
 死体があるのを知ってる。
 まさか、私を第一発見者にして犯人にするつもりか……?

 でも、ここでやりとりをやめる気はない!
 最高のネタじゃないか。
 オカルト奇天烈博士の殺人事件か……。

『かならずたすける』

 ネタになるなら、なんでもいい!
 口からでまかせなんでも、やるさ。

『ありがとう。たすけてください』
 
 不気味な返信がすぐに来た。
 なんなんだこいつは……。