さつじんじけんをしっています


「殺人事件を知っています……か」

 香ばしいのがキタ! と私はSNSのタイムラインから見つけた呟きをクリックする。
 どんなやつか見てみないと。
 何度も思うが、狂人なんかいっぱいいる。

 息するように嘘をつくやつだって当然いる。
 
 正気で狂気なネタを言っているのかを、見極めなければならない。

「どんなやつかね……」

 アカウントを見てみる。
 アイコンは可愛らしい女の子……いや男の子か?
 整った天使のような顔をしている。
 でもどこか不自然。
 AIイラストか?
 紹介プロフィールは
『よろしくおねがいします』
 の一言のみ。
 
『さつじんじけんをしっています』
『さつじんじけんをしっています』
『さつじんじけんをしっています』
『さつじんじけんをしっています』
『さつじんじけんをしっています』
『さつじんじけんをしっています』
『さつじんじけんをしっています』
『さつじんじけんをしっています』
『さつじんじけんをしっています』
『さつじんじけんをしっています』
 
「うーん、妄想がヤバイやつかなぁ」

 アカウントは三ヶ月前に作られている。
 フォロワー数0。
 フォロー数0。
 
 そりゃそうか。
 この言葉だけ、三ヶ月前から三時間ごとに繰り返し呟かれている。

 でも、たまに煽りがいるな。

『妄想おつ! じゃあ詳しく教えろよ』

 などという返信(リプ)がついている。

『だいれくとめーるをください』

 という返事が返されている。
 周りが少し騒いでも、こいつの態度は変わらない。
 
 リプをする人間でもダイレクトメールまで絡む人間は、どこまでいるだろう。
 その後の話はどのアカウントでも、呟くことはなかった。

「へっへっへ~じゃあ私もリプしてみますかぁ」

 ちょうど24時になった。
 明日は出社なんだけど、まぁいいだろう……。

『さつじんじけんをしっています』
 
 TLにやはり現れた呟き。
 これを見ている人間はどれだけいるだろうか……。

「やるか……!」

 崖っぷち女に怖いものなどない!
 
 私のアカウントは『四葉のクローバー』という性別不明のアカウント。
 自分での呟きはしていないので正体がバレる事はない。
 
 私はすぐに呟きに返信をした。

『くわしいはなしをききたいです。だいれくとめーるしていいですか?』

 こちらからグイグイいく作戦だ。

『どうぞおねがいします』

 うわ……即返信きた。