《page 01》
◯タリエの森とベヒモスを一望する俯瞰図
大地と一体化して山と化していたベヒモスの亡骸が、全体を激しく揺らしながら、緩慢な動作で太い四本の脚を動かして立ち上がろうとする。
周囲の森から鳥の群れが飛び立ったり、ベヒモスの巨体から土砂が剥がれ落ちたりするなど、巨大感を演出する描写も加える。

《page 02》
◯モルゲン市 屋外 城壁の外
ベヒモスが四本の脚で立ち上がろうとする様子は、モルゲン市からも目視することができた。
何人もの住民達が驚きと不安の目でその光景を見守っている。
その中には、第2話でエルが助けた少女マーガレットの姿もある。

マーガレット「勇者様……神官様……エル様……」

《page 03》
◯獣人の集落の外れ ベヒモスの頭部
緩慢に立ち上がろうとするベヒモス(仮初めの命のアンデッド状態)
その激しい振動の只中、死神のような姿をした屍王レヴナントが、自分の魔法の成功を見届けて満足気に哄笑する。

レヴナント「ははははは! 他の魔王共は実に間抜けだったな!」
レヴナント「ケダモノ共と律儀に戦う必要がどこにある!」
レヴナント「ベヒモスさえ手に入れてしまえばこちらのもの!」
レヴナント「これこそが軍略というものだ!」

そこに獣人の戦士が駆けつけ、槍を構えてレヴナントに飛びかかる。

獣人「貴様! 何をした!」

《page 04》
◯獣人の集落の外れ ベヒモスの頭部(前ページから継続)
獣人達の槍がレヴナントに突き刺さり、ローブを貫いて完全に貫通する。
しかし、獣人は困惑の表情。

獣人「どういうことだ、まるで手応えが……ぐわっ!」

白骨の腕が獣人の喉首を鷲掴みにする。

《page 05》
◯獣人の集落の外れ ベヒモスの頭部(前ページから継続)
レヴナントは槍に貫かれても完全にノーダメージ。
喉首を掴んだ手を通じて、獣人に邪悪なオーラを注ぎ込んでいく。

レヴナント「おお、なんということだ。ローブに穴が空いてしまったではないか」
獣人「ぐ、が……!」
レヴナント「この罪は重いぞ? 罰として、貴様の命をいただこう」
レヴナント「心配するな。肉体も無駄なく使ってやる。我が忠実なる兵士の一体として――」

ページ最後のコマで、高速で動く何かがシュッと音を立ててレヴナントの顔に迫る。

《page 06》
◯獣人の集落の外れ ベヒモスの頭部(前ページから継続)
トリスの強烈な飛び回し蹴りがレヴナントの頭に直撃。
頭蓋骨が首の骨から外れ、半分砕けながら吹き飛んでいく。

レヴナント「ぐはあっ!?」

《page 07》
◯獣人の集落の外れ ベヒモスの頭部(前ページから継続)
吹き飛び、バウンドするレヴナントの頭蓋骨。
トリスが素早くそれに追いついてキャッチする。

トリス「スケルトンタイプのアンデッドに、刺突や斬撃は効果が薄い」
トリス「ぶん殴って砕くのが一番確実だ」

頭を失ったレヴナントの胴体(ローブの中は白骨)が崩れ落ち、獣人も解放されて咳き込む。

《page 08》
◯獣人の集落の外れ ベヒモスの頭部(前ページから継続)
レヴナントが頭蓋骨だけで喋り始め、自分を倒したのが勇者トリストラムだと気付いて驚愕する。

レヴナント「うぐぐ……我を屍王レヴナントと分かっての狼藉か……」
トリス「おっ、さすがに頑丈。久しぶりだな、レヴナント」
レヴナント「何ィ!? 勇者だとぉ!? 貴様何故ここに!」
トリス「どいつもこいつも似たような反応するのな」

《page 09》
◯獣人の集落の外れ ベヒモスの頭部(前ページから継続)
トリスは頭蓋骨だけのレヴナントを掴んだまま、ベヒモスの再起動について尋問する。

トリス「屍王レヴナント。これは貴様の仕業だな?」
トリス「ベヒモスは大魔王に魂を没収されて亡骸になっていたはず」
トリス「再起動させる方法は、正規の手順通りに魂を戻してやるか、死霊術で仮初めの命を吹き込んでやるかのどちらかだ」
トリス「お前なら簡単だろ?」
レヴナント「ぐぬぬ……」

半壊した頭蓋骨だけでも表情豊かに悔しがるレヴナント。

《page 10》
◯獣人の集落の外れ ベヒモスの頭部(前ページから継続)
巨狼形態のフェルヴァックが、エルとリネットを背中に乗せて、胴体の方から大ジャンプでトリスから少し離れたところに着地する。

リネット「勇者様! 何が起きているんですか!?」
トリス「話にあった魔王級の仕業だよ。死霊術でベヒモスを蘇らせやがったんだ」

トリスがレヴナントの頭蓋骨を向けると、リネットは「ひぃっ!」と短い悲鳴を上げた。

《page 11》
◯獣人の集落の外れ ベヒモスの頭部(前ページから継続)
引き続き、頭蓋骨だけのレヴナントを尋問するトリス。
ベヒモスの覚醒はかなりのスローペースだが、振動は止まらない。

トリス「さて、と。死霊術の解除方法、大人しく教えてもらおうか」
トリス「もしくは自分で解除するか。好きな方を選んでいいぞ」
レヴナント「くくく……ならば勇者よ、取引といこうではないか」
レヴナント「我が要求を受け入れるのであれば、ベヒモスの再起動を止めてやらんでもないぞ?」

トリス「あっそう。じゃあいいや」

トリスが頭蓋骨をぽいっと投げ捨てる。

レヴナント「のわぁ!?」

《page 12》
◯獣人の集落の外れ ベヒモスの頭部(前ページから継続)
投げ捨てられたレヴナントの頭蓋骨をキャッチしようとするリネットだったが、うまく掴めずに取り落とし、わたわたと手を動かして手の中で何度も跳ねさせる。
最終的に、頭蓋骨はエルが涼しい顔でキャッチ。

トリス「俺が聞きたかったのは『死霊術の穏健な止め方』だ」
トリス「『乱暴な止め方』でいいなら、わざわざ取引なんかするまでもなく知ってるよ」
トリス「二次災害がちょっとだけ心配だけどな」

トリスは地面に片膝と左手を突いてしゃがみ込み、地面を殴る準備をするかのように右手を上げた姿勢を取る。

トリス「……この辺りか」

《page 13》
◯獣人の集落の外れ ベヒモスの頭部(前ページから継続)
トリスが前ページの構えを取ったまま、幾つもの強化魔法を立て続けに発動させる。
拳の破壊力をどんどん高めていると、読者が察せられるような描写をする(例:右腕の周囲に魔法陣が浮かぶ、強力そうなオーラを纏う、稲妻状のスパークが走る、など)

トリス「補強魔法(リインフォース)、強化魔法(エンハンス)、連結多重展開」
トリス「加速魔法(アクセラレイト)、対象限定収束発動」
トリス「……手加減はしてやるから、ぶっ壊れてくれるなよ?」

最終コマは、トリスが地面めがけて拳を繰り出す瞬間。

《page 14》
◯タリエの森 ベヒモス全体を収める構図
場面転換。page01と同じく、ベヒモスの巨体を外から写すアングル。
隕石でも落ちたかのような凄まじい一撃がベヒモスの頭部に打ち込まれ、その衝撃で、起き上がりつつあった巨体が地面に叩きつけられる。

《page 15》
◯モルゲン市 屋外 城壁の外
Page14の瞬間(地面に叩きつけられるビヒモス)をpage02の住民達の視点からもう一度。
マーガレットを含む目撃者達は、目を丸くして愕然とするしかない。

《page 16》
◯ベヒモス胴体側 獣人の集落
衝撃のシーンを更にもう一度。今度は背中の上にいる獣人達視点。
ベヒモスの巨体が一瞬のうちに叩き伏せられたことで、背中の台地にいる獣人達は慣性で宙に浮き上がったようになる。

《page 17》
◯獣人の集落の外れ ベヒモスの頭部
トリス達がいる場所に場面が戻る。エルとリネットを乗せたフェルヴァックも宙に投げ出されていたが、何とか転倒することなく着地に成功。
二人+一頭+頭蓋骨だけのレヴナントは、それぞれのキャラクター性に合った顔で驚愕し、愕然として何も言えなくなっている。

◯タリエの森 ベヒモスの顔部分アップ
同ページ内で場面転換。死霊術で動かされていたベヒモスの顔の各所(目や口など)からレヴナントの邪悪なオーラが抜け、再び機能停止する。

《page 18》
◯獣人の集落の外れ ベヒモスの頭部
他の面々が唖然としている中、トリスだけはマイペースにいつも通り。

トリス「ふぅ、これでよし」
エル「いいい、いやいや! 何がヨシなのかさっぱり分からん!」
エル「何がどうなって止まったんじゃ!?」

トリス「難しいことはしてないって」
トリス「死霊術で付与された仮初めの命を、思いっきりぶん殴って追い出した。それだけだよ」
トリス「定着する前なら簡単に追い出せるもんだろ?」
レヴナント「簡単なわけがあるかぁ!」

頭蓋骨だけで騒ぎ立てるレヴナント。

《page 19》
◯獣人の集落の外れ ベヒモスの頭部(前ページから継続)

トリス「それはともかく、これでベヒモスの復活は阻止できたわけだ」
トリス「残る問題は、捕まえた犯人をどうするか、だよな」

トリス、エル、リネット、フェルヴァック(狼モード)が、エルの手に掴まれた頭蓋骨だけのレヴナントを揃って見下ろす。

レヴナント「き、貴様ら、何をする気だ……?」

台詞だけのコマでレヴナントの悲鳴が響き渡る。

レヴナント「ぎゃああああっ!」

《page 20》
◯獣人の集落の外れ ベヒモスの頭部(前ページから継続)
レヴナント(頭蓋骨)の額に至上契約(フェイタル・ギアス)の魔法紋が浮かんでいる。
第02話冒頭でエルの額に浮かんだものと同じ。
エルがレヴナントを片手に持ち、にやにやと愉快そうに笑う。

レヴナント「ぐうう……な、何たる屈辱……」

エル「くはははは! よく似合っているぞ、レヴナント!」
エル「これでもう、貴様は人間共に危害を加えられん!」
エル「死の神を気取る貴様にしてみれば、封印されるよりも苦しかろう!」
トリス(楽しそうだな……同じ立場の奴が増えて嬉しいのか?)

人間の姿に変身したフェルヴァックが、訝しげにトリスに話しかける。

フェルヴァック「なぁ、兄貴。こいつ生かしといて良かったのかよ」

《page 21》
◯獣人の集落の外れ ベヒモスの頭部(前ページから継続)
フェルヴァックの質問に、トリスは困ったように笑って肩を竦める。
台詞多めの会話シーン。

トリス「魔王級のアンデッドだぞ? 殺せるなら苦労はしないって」
トリス「粉々に砕いても、どうせ魂だけで逃げ出すだろうしな」
リネット「封印するのは駄目なんですか?」
トリス「並大抵の封印魔法よりも、至上契約(フェイタル・ギアス)の方が強力なんだ」
トリス「お互いの同意がないと成立しない代わりに、二人がかりで魔法を掛けてるようなものだからな」

ページの中程で、エルがレヴナントの頭蓋骨を弄びながら会話に混ざってくる。

エル「魔法を掛けられる対象が強ければ強いほど、必然的に契約の強度も跳ね上がる」
エル「それが至上契約(フェイタル・ギアス)じゃ」

《page 22》
◯獣人の集落の外れ ベヒモスの頭部(前ページから継続)

エル「たとえこやつを封印したところで、他の魔王に解除されてしまえばそれまで」
エル「しかし、この至上契約(フェイタル・ギアス)を解除できる魔王はおらんじゃろう」
エル「勇者トリストラムと魔王の合体魔法も同然ゆえな」

トリス「同意が取れなかったら、解放のリスク覚悟で封印してたけどな」
トリス「すぐに納得してもらえてよかったよ」

リネット「な、なるほど。それなら確かに、封印するよりも確実ですね」
フェルヴァック「さすが兄貴! 深謀遠慮ってのはこのことか!」
レヴナント「ぐぬぬ……何が同意だ、脅しも同然だったではないか……」

トリスとエルの説明を聞いて納得するリネットとフェルヴァック。
一方のレヴナントは悔しそうに顔を歪めている(頭蓋骨だが漫画的表現として顔が動く)

《page 23》
◯獣人の集落の外れ ベヒモスの頭部(前ページから継続)

レヴナント「ええい! 分かった分かった! 約束通り、人間にも獣人にも手を出さん!」
レヴナント「だが! 貴様らの復興に手を貸すこともせんぞ! それが契約だ! いいな!」
トリス「それで充分。もう一つの条件も忘れるなよ」

エルがレヴナントの頭蓋骨を山なりに放り投げる。
復活したレヴナントの胴体(大仰なローブを纏った白骨)がそれをキャッチし、首の骨の上に頭蓋骨を据える。

レヴナント「『他の魔王について得た情報は速やかに共有せよ』」
レヴナント「契約(ギアス)のせいで忘れたくても忘れられんわ」
レヴナント「忌々しい……屍王たる我を小間使いのように扱いおって」

トリス「こっちも人手不足でね。悪く思うなよ」
エル「解放されるだけマシじゃろうて。運が良かったな」

《page 24》
◯獣人の集落の外れ ベヒモスの頭部(前ページから継続)
ふわりと宙に浮かんで立ち去ろうとするレヴナント。
しかし途中で上昇を止め、不思議そうに振り返る。

レヴナント「ところで、エルケーニッヒよ」
レヴナント「貴様は何故、勇者に手を貸しておるのだ?」
フェルヴァック「あ、オレもそれ気になってた」

トリスとリネットが『あーあ、遂に聞かれた』とでも言いたげな顔でエルに横目を見やる(表情だけで台詞にはしない)
エルは怒りと屈辱にぷるぷると震え、逆ギレ気味に魔法の石弾を連発してレヴナントを追い払う。

エル「さっさと消えんかーっ!」

その後、よく分かっていない様子のフェルヴァックを一コマ挟み、次のコマで察する。

フェルヴァック「……あっ!」

トリスとリネットが無言で頷いて、フェルヴァックの察しを肯定する。

《page 25》
◯ペンドラゴン王国本島 魔法使いヴィヴィアンの屋敷 リビングルーム
大幅に場面転換。怪しげな洋館の一室で、元勇者パーティーの魔法使いヴィヴィアンが寛いでいる。
ソファーに腰掛けて本を読み、ソファーの前のテーブルに置かれた魔法の水晶玉越しに、同じく元勇者パーティーの戦士マークと遠隔会話中。
マークの方は水晶玉に浮かび上がった姿で描写する。

マーク『……ってなわけで、こっちはそれなりに順調だぜ』
マーク『褒美で貰った王都の一等地に、念願の道場も建てられそうだしな』
マーク『アンブローズは大神官に出世したらしいし、ロビンは盗賊だった頃の罪を許されて、かれこれ五年振りの里帰り』
マーク『いやぁ、死ぬ気で戦った甲斐があるってもんだ』

《page 26》
◯魔法使いヴィヴィアンの屋敷 リビングルーム(前ページから継続)
ヴィヴィアンは本に視線を落としていて、マークが映った水晶玉の方を見ていないが、会話はきちんと交わしている。

マーク『お前の方はどうだ? 研究所、おっ建てるって言ってたよな』

ヴィヴィアン「準備中です。発注した設備が仕上がるまで、ざっと一年は掛かりますので」

マーク『マジで? 大変だなぁ。建物さえあればいい道場とは訳が違うか』
マーク『そういや、トリスの奴は上手くやってんのかね』
マーク『平民上がりで勇者になって、今度は辺境伯領の領主サマときた。ほんと波乱万丈にも程があるよな』

ヴィヴィアン「大丈夫でしょう。辺境伯くらいの貴族なら、優秀な役人もたくさん揃ってるでしょうし」
ヴィヴィアン「トリスは死ぬほど頑張ったんですから、ふんぞり返って余生を送れるくらいの見返りがなきゃ不公平ってもんですよ」

《page 27》
◯魔法使いヴィヴィアンの屋敷 正門前
一時的な場面転換。屋敷から前庭を挟んだ先の正門の前に、ボロボロのローブを纏った人影が立っている。
その人影が門に備え付けられた小さなベルを鳴らすと、屋敷の扉のベル、屋敷内の壁に取り付けられたベルが、連鎖的かつひとりでに鳴り、最終的にヴィヴィアンがいるリビングに備えられたベルが鳴る(魔法で作られたインターホンのような仕組み)

《page 28》
◯魔法使いヴィヴィアンの屋敷 リビングルーム
ヴィヴィアンは前ページの仕組みで来客に気付き、マークとの会話を切り上げる。

ヴィヴィアン「すみません、誰か来やがりました」

水晶玉にさっと手をかざし、マークの姿を消して玄関先の人影の姿を映す。
斜め上から俯瞰する覗き見アングルだったが、その人影は水晶越しのヴィヴィアンの視線に気付き、顔を上げてにんまりと笑った。
人影は性別不詳の若者で、口には人間のものではない鋭い牙が生えている。

ヴィヴィアン「……っ!」

《page 29》
◯魔法使いヴィヴィアンの屋敷 正門前&リビングルーム
ヴィヴィアンと謎の人物が水晶越しに会話する。
ヴィヴィアン視点のコマと謎の人物視点のコマを適宜切り替え。

謎の人物「いやぁ、どうもどうも。お久し振りです」

謎の人物がフードを外す。尖った耳に小さな角。明らかに魔族としか思えない外見。
下手に出た口調だが、媚びているというよりも小悪魔的なニヤニヤ笑い。

ヴィヴィアン「あんたは……魔王ルキフグスの手下でしたっけ」
ヴィヴィアン「何の用です? 主人の仇討ちに来たっていうなら、遠慮なく返り討ちにしてあげますけど」

魔族「ははは、まさか。あのドケチな守銭奴に愛着なんかないですって」
魔族「むしろブッ殺してくれて感謝してるくらいですよ」

《page 30》
◯魔法使いヴィヴィアンの屋敷 正門前&リビングルーム(前ページから継続)
引き続き、違う場所にいるヴィヴィアン視点のコマと魔族視点のコマを適宜切り替え。

ヴィヴィアン「じゃあ何しに来たんです。場合によっては消し炭ですが」
魔族「おお、怖い怖い。勇者パーティーの魔法使いに喧嘩売るほど、命知らずじゃありませんよ」
魔族「実はルキフグスが死んだ後、配下だった魔族は島流しにされてしまいましてね」
魔族「最近ようやく逃げ出してきたのはいいんですが、ご覧の通りカネにもメシにも困る有様でして」
魔族「とりあえず売れるものを売って、当面の路銀を稼ごうかと思ったんです」

《page 31》
◯魔法使いヴィヴィアンの屋敷 正門前&リビングルーム(前ページから継続)
引き続き、違う場所にいるヴィヴィアン視点のコマと魔族視点のコマを適宜切り替え。
ヴィヴィアンはだんだん苛立ちを溜め込んでいるように見える。

ヴィヴィアン「何で私なんですか。誰でもよかったでしょうに」

魔族「魔族と取引してくれる人間なんて、魔法使いくらいしかいないでしょう?」
魔族「しかも悪名高き大魔王軍の敗残兵!」
魔族「魔王クラスならまだしも、私みたいな下っ端はコソコソ隠れて生きるしかありませんので」

ヴィヴィアン「はぁ……分かりました、分かりましたよ。話だけは聞いてあげます」

魔族「いやぁ、有り難い! きっと気に入ると思いますよ!」
魔族「売りたいのはモノじゃなくて情報なんですがね?」

《page 32》
◯魔法使いヴィヴィアンの屋敷 正門前&リビングルーム(前ページから継続)
ページの上半分に笑顔の魔族の大ゴマ、下半分に表情を凍りつかせたヴィヴィアンの大ゴマ。

魔族「勇者トリストラムと魔王エルケーニッヒが手を組んだ、とかどうでしょう」
ヴィヴィアン「……は?」