「オイ……図体だけ一人前の雑魚(ざこ)。今すぐアリシアからキタねぇ足を降ろせ!!」
「な……な……なんなのだキサマは一体!? 」
「それは今からテメェがその体で答えをだせばいい。相棒行くぞ!!」
『承知!!』

 と、同時にゴッド・ルアーをアリシアの兄貴へとぶん投げた、が。
 白服に包まれた病的な顔の男が、突如割り込みゴッド・ルアーを細身の剣で弾く。

「おっと、なんですかコレは? 釣り道具? 面白い、ならこれならばどうです?」

 こともあろうか、ゴッド・ルアーと相棒をつなぐ釣り糸(ライン)を細身の剣で両断してしまう。

 その一瞬で理解した。
 この男はこれまで倒してきた誰よりも、確実に強いのだと。

 だから悔しげに「クソオオオオ!!」と吠えつつ、ルアーを回収しながら甲板へと降りる。
 
「お、俺のラインが斬られただとッ!?」
「ふん、こんな糸をなぜ断ち切れなかったのですかね。帝国兵は無能者揃いという事ですか?」
「クッ。ゲスダー、悔しいがよくやった! 今がチャンスだ、クソガキの首を落とすのだ!!」

 その言葉で後退り、三歩後退しつつ「くそッ……」と呟く。

「おやおや、この程度でよくもまぁココまで来れたものですね。さぁ死になさい!!」

 斬り掛かってくるゲスダーと呼ばれた男へ、もう一度ゴッド・ルアーを投げつける。

「また同じ事をするとは、無謀・馬鹿・阿呆の極みですね。こんなものは――ッなにぃッ!?」

 先程と同じように、ラインを真っ二つにしたゲスダー。
 しかし切断したラインが復活し、そのままラインが五芒星の形になって強烈にゲスダーを弾き飛ばす。

 意表をつかれた事で、思い切りそれを喰らい玉座のすぐ横の柱へと激突。
 背中からぶち当たり「カハッ」と肺の空気を漏らし、ゲスダーは崩れ落ちた。

「な、なぜ斬ったはずの糸が元に戻っているのですか!? しかも先程よりも格段に硬いのですか?!」
「これだから異世界の未開人には困ったものだ」
『主これは一体……』
「ロープマジックの応用だ。手の代わりに落ちていた木の破片を利用したけどな」

 相棒は『なるほど』と納得するが、納得できない男もここにいた。

「言っている意味が分かりませんが、それでも一つ分かった事があります」
「奇遇だな。俺も分かることがある」

 ムクリと起き上がるゲスダーは、そのままこちらへ歩いてくる。
 同時に俺も歩き、ヤツとの距離十メートルの所で同時に吠えた。

「「次の一撃でしとめるッ!!」」

 先程とは比べ物にならない速度で襲いかかってくるゲスダー。
 しかし俺には剣の腕も、避ける技術もない、ただの釣り師(アングラー)だ。

 だから最高の釣り竿さばきで、最大に強化した魔釣力をゴッド・ルアーへ流し、ヤツの剣へとぶち当てる。

「ぐぅぅッ!? 聖騎士団長の私が、悪魔の聖女の手先などにやられてたまりますか!!」

 渾身のルアーだったが、それを白い魔力を剣にまとわせて弾き返し、さらに斬り掛かってくる。
 
 そのあまりの速さに剣術のど素人の俺は、斬られるのが確実な剣のコースへと乗ってしまう。

 妙にその剣先が遅く見えてしまい、そのまま成すすべもなく斬られる刹那、相棒が動き出す。

『主よ短い間でしたが楽しかったですよ』

 そう言うと勝手に動き出し、ゲスダーの狂剣をあの細身で受けた。

「あ、相棒!! お前何して――ッ!? なんだ?!」

 ここまで酷使し、ヒビまで入った体を使い、俺を守ってくれた。
 が、それもここまでだったのか、相棒から突如激しい光が弾け飛び、相棒の体が激しく光りだす。