エマージェの足元に転がる何か。
 それはどう見ても二人の男が転がっていた。

 一人は人間であり、もう一人はケモノの耳を持った毛深い男。なんなんだコイツらは?

「お、おいわん太郎! それは一体誰だ? つか死んでるのか?」

 相棒を片手に持つちつつ、ルアーを手すりにかけて一気に下へと降りる。
 近くで見るとやはり死んでいるのか、全く身動き一つもない。

「んん~きっとわる~いヤツらだワンよ」
「どういう事だ?」
「それはねぇ――」

 わん太郎とエマージェが海岸で遊んでいた時に、潮風に乗って知らない匂いがしたらしい。
 流石はケモノと言ったところか。そんな二人はこくりと頷くと、エマージェが正面から向かい、わん太郎は背後から迫った。


 ◇◇◇


「クッ、なぜ見つかった?!」
「あの距離で見つかるとかありえないぞ!」
「んぁ~。ワレのお鼻は特別せいだからして、えらいワレは何でもお見通しなんだワン。おまえたちは何故うちを覗いていたんだワン?」

「ッ、話すケモノだと?! まずいSランク以上のバケモノか!!」
「チィならばダメ元でコレでも喰らえッ!!」

 わん太郎の脳天めがけて毒針が複数打ち込まれた。
 ブツリと眉間に刺さる毒針に、男たちは歓喜する。

「やったぞ! 今のうちに逃げ……ギャアアア?!」
「お前なにやって――ゴフォ!?」
「あっぶないんだワンねぇ。ちゃんとお返ししたワンよ?」

 眉間に刺さった毒針は全て氷の塊に弾かれ、さらに弾き帰った毒針が男たちへと突き刺さる。
 よほど強力だったのか、そのまま男たちは絶命してしまった。


 ◇◇◇


「と、言うわけなんだワン。突然襲いかかってきてねぇ。ワレはびっくりしたんだワンよ」
「そりゃ驚くよ。しかしどこから来たんだコイツら? この島は無人島のハズだけど……」

 不思議に思い見ていると、灰色の毛を持つケモミミ男が苦しげに息を吹き返す。
 どうやら見た目がいかついが、体もまたそうらしい。

 そこへアリシアがやってきて、手には先程作ったというよく効く薬を持っていた。

「今ならこの薬で治るはずです。さぁヤマトさん」
「おう、助かる。ほら飲め……」

 苦しむ男の口元へと試験管に入った、金銀色の謎液体を流し込む。
 するとあれほど苦しんでいた男が、とたんに息を吹き返し、大きく叫び恐怖した。

「ゲホッ……助かった……つぅぅ!? バケモノ!!」
「んぁ~失礼なケモミミだワンねぇ。そこのデカヒヨコなら分かるけど、ワレはとってもキュートだワンからして」
「ヒィィィ!?」

 ブルブルと震える男に呆れながら、とりあえず話を聞く。

「おい、命が助かったんだから話せ。オマエは何処から来た? そしてなぜ俺の家を監視していた?」

 するとあれほど震えていた男は、驚くほど冷静になり、静かに話し始めた。

「……知らん。気がついたらこの島に流されていた。俺こそ教えてくれ、ここはどこなんだ?」
「なら質問を変えよう。なぜ〝アリシアを一度も見ない〟?」
「ッ!? 知らぬ名前だが誰だ?」
『知らぬ名前? それはおかしいですね。不自然なほど、ゾンビ娘を見ていないのが何よりの答えと思いますがね』

「なッ!? どこから声がした!!」
「さぁどこだろうな? まぁ話す気がないならいい、しばらく牢屋に入って反省でもしとけ」
「牢屋? そんなもの何処に……なッ!?」

 ケモミミヤロウがそう言ってる最中に、相棒を使ってヤシの木へと虎色のルアーを飛ばす。
 
 瞬時にヤシの木から柵を創り出し、それを砂浜の端へと一気に組み立てる。
 驚く男だったが、その服へとルアーを引っ掛けて、一気に牢の中へと放り込み上から蓋をした。

「ぐぁッ!? 痛つつ……一体お前、いやお前らは一体……」
「さてね。ただ一つ言っておくぞ? 俺の友達に手を出したら――お前の首から上を噛み切る。アイツがな?」

 わん太郎を指差しそう言うと、また震えだして尻餅をつく。
 よほど怖かったのか、わん太郎見て涙目だ。