「ふぁ~ちょっと早いけど起きるかぁ……」
「ふぇ~そうですねぇ……」
「ふわ~まったく迷惑なヒヨコだワン……」
そう言いながら俺たちはエマージェの体から降りると、ヤツはトテテテと走り出し、丁度乗れるほどの岩の上でまた鳴き出す。マジ近所迷惑なんだが?
『清々しいほどの鶏っぷりですね』
「ほんと、ドコが神の生体兵器なんだアイツ?」
「ふふ、いいじゃないですか。可愛いんですから」
「あざといんだワン」
それから海へ行ってシャケに似た魚を釣り上げ、それを輪切りにした後、海の水にかるく漬け込んだ状態で焼く。
思ったよりもふくよかな味と、満足感を感じて満腹になった所で今後の話をしていると、アリシアが思いついた感じで話す。
「えっとヤマトさん、一つお願いがあるんですが」
「ん、言ってみ?」
「はい、えっとですね。私も色々と食材を探したり、探索をしたいなと思いまして、今日から別行動の時間もあれば、より早くお食事も用意できると思うのですよ」
「確かにそれはそうだけどなぁ。子供一人で歩かせるのは心配だな」
「もぅ! 私のほうがお姉さんなんですぅ!」
「ハイハイ。とはいえ……近場なら安全性も確認出来たし、俺と行った場所以外には、絶対に行かないって条件ならいいぞ?」
「本当ですか!? じゃあ頑張りますね!!」
「無理はするなよ? それと一応エマージェも連れて行ってくれ。何かあったら盾にして逃げてこい」
その言葉に「ぽみょっぅ!!」とお怒りな様子だが、まぁいいだろう。
一応は四聖獣らしいし、何かあったらアリシアを守ってくれるだろうからな。
見た目は黄色のデカイ毛玉だけど、内包する力は感じることができる。
足も意外と早いし、まぁ大丈夫だろう。
「じゃあ準備しますね! エマージェちゃん、待っててね?」
「ぽみょん!」
そう言うと、アリシアは最近作ったばかりの自分用のカゴを取りに、コテージへ戻る。
部屋も作ったのだが、なぜか俺の部屋で寝たがるから困った娘だ。
そんな事を思っていると、アリシアが戻って来る。
「じゃあ行って来ますね!」
「あぁ頼むよ。絶対に無理だけはしちゃだめだぞ?」
「ふふ。分かっていますって。じゃあエマージェちゃん行こ!」
「ぽみょぽみょ♪」
そう言うと、二人は何度も手を振りながら食材探しに出かける。
俺もそれに応え、元気に手を振りかえした。
『随分とあかるくなりましたな』
「だな……やっぱり子供は笑顔が一番だからな」
「じゃあワレたちも、お出かけしようだワン」
「よっし、じゃあ今日もデカイの釣るぜッ!!」
相棒を握りしめ、お気に入りの船着き場の先端へと向かうのだった。
◇◇◇
◇
――大和が釣りに出かけた頃、アスガルド帝国宰相のオルドの命により配下の部隊が動く。
オルドは直接指揮ができる兵士を持ってはいないが、代わりに国の闇に深く精通する裏部隊を創設し、そのトップでもあった。
そのオルドより密命を受けた密偵五名が、早馬を乗りつぶしながら、聖石の片割れが出す光をたよりにアリシアへと向かう。
「隊長。このまま光の指す方へ向かうとなれば、ベストパーレ辺境伯領についてしまいますが」
「ベストパーレ辺境伯か……また面倒な場所にいるものだ。が、俺たちの任務は変わらぬ。元・聖女を暗殺するのみよ」
その言葉に部下四名は小さく返事をすると、馬を走らせる。
目的はこのあたり最大の商業地であり、軍備の整った街である〝領都イグザム〟
そこへ帝国の魔の手が入り込むのに、そう時間はかからなかった。