「え。ロッドマンさん、どういう事ですか?」
アリシアは不思議そうにたずねると、「ワレは聞いたから知っているんだワン」と小狐様は得意顔だ。
『いいですか、主はあのケモノ二号を非常食と言いました。つまり……』
その先を俺にふってきた相棒。だからご期待にそってお答えいたしましょう。
「そう、コイツは非常食! つ・ま・り! 〝エマージェンシーフード〟ってワケだ! どうだ、カッコイイっしょ?」
言ってやった! そう言い切った。
するとどうだろう、相棒が『やはり……』と呆れて言ったのを皮切りに、アリシアは「ヤマトさん……」とハイライト消えた目で見つめ、エマージェは「ぴょぽぽっ!!」と何か抗議しているが、鳥さんの言葉はしらないから良しとする。
そう堂々と胸を張り周りを見渡すと、わん太郎がエマージェへと「ワレは変な名前の筆頭先輩だからして、崇めるがいいんだワン!」とか言ってる。実に微笑ましい光景だ。
「と、言うわけで四聖獣だかなんだか知らないが、お前は俺の非常食――〝エマージェ〟だッ!!」
そう宣言したした瞬間、エマージェが真っ赤に燃え上がる。
が、その炎が腹のあざといハートマークに吸い込まれたと同時に、島の中央の方角から鐘の音がなった。
――同時刻。神釣島・朽ちた社内。
『【告】神釣島。ノ。王ガ。四聖獣――神兵No:01――黎明ノ煉獄ノ所有権ヲ。中央管理室ニ。申請――』
『――個体名:エマージェンシーフード。トシテ。受理。コレニヨリ。神兵No:01――黎明ノ煉獄。ハ。対象:島野大和ノ管理下ニ移行』
『〝理〟ノ。アーカイブヨリ。使用権限ヲ譲渡準備。マデ。三・二・一【済】』
『現在。神釣島ノ稼働率:20%。再起動。マデ。アト……』
人知れず始まる〝理〟による何か。
もし知るものがいれば、確実にこう言うだろう……自己の目的のために世界の秩序を破壊するのか、と。
だが何があっても〝理〟はとまらない。
その目的はあるのか? それともこの世界とは全く関係がないのか?
それすら誰も分からず、今もこうしてカウントダウンが続くのであった。
◇◇◇
◇
――あれからエマージェを置いて寝ようとするが、寂しいと泣くから、仕方なく一緒に寝ることにした。
無駄に大きいエマージェは、ベッドとしては破格の気持ちよさを持つ。
乗ってもいいと言うので、まずは俺がヤツの腹へと登り思い切り大の字になって空を眺めたら星がふってきた。
その後全員でエマージェのハラの上に寝べりつつ、今にも闇夜から抜け落ちる星だと思えるほどだ。
「綺麗ですね……」
「そうだ、な。俺の故郷でもここまでの星空はなかったよ……」
そのまま朝までぐっすりと寝て、気がつけばエマージェの朝一番の鳴き声で目が冷める。
「つぅ~うるさッ?! 一体何だ?」
「んぁ~うるさいんだワンねぇ」
「んんん……どうしましたか、みなさん……」
『みなさんおはようございます。どうやら朝なので、なき始めたようですね』
そんな迷惑な新しい仲間のエマージェに呆れながらも、今日もまた未知の冒険が始まるのだと胸が踊った。