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「んぁ? んんん? んあぁぁぁ?」

 快適なはずのベッドを作り、いい気持ちで寝ていると、枕元でぽむぽむ(・・・・)とあざとい足音がする。
 しかも何か唸っているのか、ずっと何かを言っていた。

 さすがに五月蝿(うるさ)くなり、眠い目をこすりながら目覚めてから、その原因をつまみ上げる。

「くぉらぁ~、今何時だと思っているんだオマエは?」
「んぁ、ごめんなんだワン。でも、どうにも落ち着かない気配がするんだワン」
「気配? ……そう言えば、何とも言えないおかしな気配がするな」

 何とも言えない圧迫感みたいな物を感じ、周囲を確認する。
 しかし何もおらず、よく探ってみるとコテージの外からそれが来ているようだ。

『ようやく気が付きましたか主』
「そう言う相棒(おまえ)は気がついていたようだな? これの正体はなんだ?」
『それなんですが、状況はあまり良くないかも知れません』
「というと?」

『はい……その前に一つ、そこの駄犬に聞きたいことがあります』
『んぁ? なんだワン? ワレは深淵をのぞく者は深淵からまた覗かれると言う意味を、深く考察している最中だからして、忙しいんだワンよ』

『微妙に違う事の考察はどうでもいいのです。それより覚えていますか、〝(ことわり)〟が言っていた四つの生体兵器の事を?』
「四つの生体兵器……んぁ! 四聖獣ってやつなんだワン!?」

 わん太郎はぴょんと飛び上がると、それが何かがわかったようで、ぽむりと手を打つ。

『そう、その四聖獣ですよ。どうです、この反応に神気を感じませんか?』
「か、感じるワン! ワレはえらいからして分かるんだけれどね、これは神が放つ気力に似ているんだワンよ!」

 相棒は『やはり……』と言いながら、自分も感じているのもソレだと言う。
 ちょうどその時、アリシアも起きてきて不安げに話す。

「ヤマトさん、この空間に満ちている気配ですが……確実に神の奇跡の気配だと思います。でも何かが違う気も……」

 ん、なぜ神の気配と分かったんだろう? そう思い、聞こうとすると相棒が話す。

『ゾンビ娘もそう思いますか? 主よ。このなんとも言えないモノの正体が分かりましたぞ。これは間違いなく、四聖獣が復活したとしか思えません』

 それを聞いたアリシアが、顔を真っ青にして思い出したとばかりに話す。

「四聖獣……ま、まさか。旧世界を一ヶ月で崩壊させたと言われる、あの四凶獣の事ですか!?」
『たぶん一緒のものでしょうね』
「ワレもそう思うんだワンよ~大和どうするワン?」

 しばらく考えた後、それが意味のない事だとさとり口を開く。

「……四聖獣だか四凶獣だかしらんけど、とにかくその気配が強い所へ行ってみようぜ? 話しはそれからだ」
「そ、そうですね。この島の大きさはそんなに広くないと聞きました。このままならいずれ遭遇するでしょうし」
「だな。じゃあ早速探しに行くぞ!」

 全員がその言葉にうなずくと、俺は相棒を握りしめ外へと出る。
 なんとも言えない不思議な感覚が、外へ出た瞬間からみつく。

「これは……面白い感覚だな」
「もぅ、面白がっていないで行きましょうよ! 多分……スグ近くですよ!」
「よく分かるなアリシア?」

 そう聞くと「そ、そんな気がするだけですもん」となぜか挙動不審になる。

「……まぁいい。俺も分かるぞ、多分……マジで近い」
「クンクン。んあ!? 滝つぼの方から獣臭がするんだワンよ!!」

 そう言うと、わん太郎は滝つぼの方へと走っていく。

「待てよわん太郎! 一人じゃ危ないぞ!?」

 そう言いながら全員で追いかけ、階段を急いで降りる。
 ますます強まる濃密な気配……そして俺たちは目撃した。

 滝つぼの中に佇む、巨大な黒い影を。