「あれ……痛みが消えた? え?」
相棒の話では普通人間よりも、かなり丈夫に作られているはずだという体。
たしかにあの高さから落ちて、しかも岩肌に背中から直撃したら普通は痛いではすまされないだろう。
それでもかなりの痛みがあったはずだし、実際息をするにも痛かった。
そいつがなぜか、不思議と無くなっていて困惑する。
「んん……頑丈すぎるだろ俺の体」
水の中で首をひねり考えていると、アリシアが右手を差し出し「どうしたんです?」と不思議そうに聞いてくる。
「あぁいや、ちょっと自分の体の頑丈さについて、卒論を提出しようかと」
そう言うと、「なんですかそれ」と楽しげに笑う。
そんなアリシアを見ていると、たった数日だけどココへ来たばかりより、とても良く笑うようになったと思う。
「今度は相棒を持っていくから、もう一回チャレンジだな」
「またやるんですか? もぅ、今度は気をつけてくださいね?」
すこし心配されるが、おいちゃんはプロの大人ですから、二度と同じ過ちは繰り返さないのさ。タブン。
「子供に心配されるとは、俺も焼きが回ったなぁ」
「うぅぅ~確かに私はマヌケですけどぉ。でもでも、私のほうがお姉さんなんですよ!」
「あ、ハイ」
「むぅぅぅ!!」
『ははは、主のいう意味はそうではありませんよ。と、まぁご無事で何よりでした』
見ればわん太郎にくわえられた相棒が、〝ぽむぽむ〟とあざとい音と共にやってきた。
「んぺッ。んぁ~ワレに運ばせるとか、やっぱり駄棒なんだワン」
『ちょっと、吐き出さないでくれますかね? 自分で飛んでいくよりは、駄犬に運んでもらったほうが早いですからね』
仲がいいのか悪いのか。
なんだか不思議なやつらだけど、まぁ仲良くはあるのかな?
その後は順調にお風呂計画も進み、もうすぐ完成だ。
檜風呂といきたかったが、周辺に香木はなかったから、まぁここは南国風にヤシの木風呂と洒落込もう。
最近フルで言うのが面倒になった、スキル:変態的な器用さ……まぁ相棒の言葉を借りれば〝変態スキル〟で、出来る範囲で具現化する。マジ万能すぎ。
「っと、ここにヤシの木の小さいのを生やして、と……よし完成!!」
「うわぁ……とってもステキです……」
気がついた頃にはもう夕暮れであり、照明用にと採取してきた光る謎キノコをパリピ風に配置した。
それがまた雰囲気ありすぎで、コテージから海側に風呂があるんだけど、その水面が海面と一体と見えるように設計した結果がヤバイ。
このロケーションだ。一泊三十万円請求されても安いってほどだろう。
そんな間接照明と、足を伸ばせるヤシの木風呂。
風呂を囲む小さなヤシの木を下から照らす、小さな光る謎キノコ。
どんだけパリピ風呂なんだよマジで!
ちなみに風呂の中に光るキノコを入れようとしたら、アリシアが「きっと溶けちゃいますよ?」と言うが、水漏れチェックのために、水をを張った浴槽へと適当に投げ入れてみた。
うん溶けなかった。
が、プルプルと震えだした直後、破裂して謎キノコの破片でベッチョリになったのはいい思い出だね。
ちなみにベッチョリになったのは、アリシアと、わん太郎。
だがアリシアにジト目でにらまれ、わん太郎には「ワレを盾にしないでほしいんだワン!」と叱られた。不可抗力だ許せ。
「しかしよくお湯をこんな方法で沸かせましたね。ヤマトさんスゴイです!」
「一発で出来れば凄かったんだけどな。まぁ何度も失敗して、やっと出来たからなぁ」
そう、俺たちが苦労して作り上げたのは太陽熱温水器だ。
馬鹿みたいに熱い南国な土地を利用し、太陽熱温水器みたいなのが出来ないかと考えた。
まず立地は滝の中腹に、開けた場所を見つけた事でいけた。
問題はその仕組だったんだけどね。