「あれ? 最初に俺が見た時は、あの地平線の上に何かモヤっとしたものがあったんだけど、今消えているな」
『あぁ、それはこの島を封印していた結界だと思いますよ。主がここの管理者になった事で、外の世界と繋がったと思われます』

「そうなの? へぇ~、誰か遊びに来るかなぁ。出来れば最弱がいいなぁ」
『なんですかそれは。とは言え、外の世界と繋がったのは良いこともあるでしょうが、また逆もしかり。この世界は主の世界と違い、いろいろと物騒なのですから』
「おまえは本当に色々と知っているなぁ。ス釣タス以外は」

 その言葉でムスっとした感じで話す相棒。

『誰よりも知っていますし、知っていたつもりでしたよ。非常識の塊な貴方と出会うまではね』

 と、恨みがましく言われてしまい、「ま、人生いろいろあるさ」とごまかし気味に船着き場っぽい場所へと向かう。
 近くで見ると本当に美しいこの湾は、純白の砂浜が本当に美しい。
 
 足元の砂をみれば、太陽光をアメジスト色に反射させたかと思うと、一歩踏み出せばガーネット色になる。
 さらにまた一歩踏み出せばエメラルド色になり、また一歩踏み出すとサファイヤ色となる。
 でも全体で見ると純白色になり、なんとも不思議な光景だった。

 それに気を良くした子狐わん太郎は、砂浜に肉球アートを創り出し芸術を楽しむ。まぁカニを見つけてはしゃいでるだけなんだけどね。

 わん太郎のはしゃぐ姿にホッコリとしつつ、近づけば近づくほどに船着き場にしか見えない自然石で出来た、全長二百メートルはありそうな場所を見て思う。

「なぁ……どう思う? これって自然石だけど、確実に人の手が入っているように見えるよな?」
『ええ、角を見てください。根本から先端まで綺麗に一直線です。全体で見れば完全な直方体ですからね』
「だよなぁ。まぁ島の中心に社もあるし、昔誰かいたのかもな。それにしてもスゴイ加工技術だ」

 目視だけど、まったく曲がったり欠けた感じもない、純白のうつくしい石の道。
 それが沖へと向かい、まるで別世界へと繋がっているかと思える錯覚を感じた。

 そのまま相棒を担ぎ、沖へと向かって歩く。
 ペタペタと素足で歩くが、意外と熱を持っていないようで軽く温かい感じだ。

 俺の足の裏がこの島に適してつくられたのか、それとも慣れたのか? 
 文明的な生活をしたいものだと思いながら、先端まで着くと早速海面を覗いてみる。

「すっげ……なんだよこの透明度……」

 水深は二十メートルはありそうなほど深い。
 しかしほぼ底までがクッキリと見え、色々な場所に魚が泳いでいるのが見える。

 ブルリと震えるほどの透明度に、自分がまるで海底から空を眺めているんじゃないかと錯覚しだす。
 自分が海の中なのかと段々思い始め、体と心が惹き込まれそうになり相棒に叱られた。

『主、それ以上はいけません。海は生命の塊ですが、それに同調しすぎると生きては帰れませんよ』
「あ……あぁ、すまない。こんな経験は初めてだよ……なんと言うか、海に飲み込まれそうになった」
『さもありましょう。この海はかなり特殊です。私ですら、こんな命の塊みたいな海水は初めて見ましたからね』

 少し怖いほどに美しい海。
 美しいものにはトゲやら毒やらがあると言うが、これはまた異質の人を呑み込む魅力があった。

「っと、じゃあ気を取り直して早速釣ったりますわ! ルアーは第一形態の黄金赤目の小魚(ミノー)でいくか」
『それがよろしいでしょうね。毒魚かどうかは、魚がルアーをくわえた時にお教えしますから』
「OK! じゃあ……行ってこおおおおおおい!!」

 相棒を全面から大きく後ろへとしならせ、その反動で黄金のルアーを勢いよくぶん投げる。
 木製のくせに妙に元の再現性が高く、ベイトリールが〝フィィィィン〟と気持ちの良い音と共に、黄金のルアーがブっ飛んでいく。サイッコーの気分だ!!

 そのまま百メートルほど飛び、着水したと同時に〝スキル:人釣一体〟が発動。
 相棒は自分でオンオフしないと分からないみたいだけど、俺は常に使っている感じだが、特に水の中に入った瞬間それがさらに強くなる感じだ。