「ん~。明日からどうすっかなぁ……ここまで来たら、もっとルアーテクを磨いてみっかな?」
『ハァ~。もうそもそもレベルはこれ以上は上がりませんよ。いいですか、釣果レベル60。これは人間が死ぬまでに普通はなかなか到達できないレベルと言うのは話しましたよね?」
確かに言われたのを思い出し「おぼえてるぞ」と言う。
『で、今は? 何ですかレベル99って? そんなの数字の上では存在しますけど、見たこと無いですよホントに! マジで!!』
マジでってアンタ。自称上品なメッキが剥がれてまっせ? 日本文化に毒されすぎじゃね?
「そりゃさっき散々聞いたけどさぁ。なんつぅか……そう。まだ先がある気がするんだよなぁ」
『主よ。私は長い時を生きてきましたが、たった二日でここまで驚いた事はないのです。お陰で竿が折れそうなほどですよ』
「そんな事言ったって、俺わるくねぇし。失礼しちゃうわ」
そう告げると、『人は常識があってこそ人と呼べるのです。貴方はどうですか?』と真顔ぽく言われた。失礼すぎんだろオイ。
そんな真実を思っていると、わん太郎がハムハムと焼き魚をかじりながら、相棒へ苦言を呈する。
「これだから駄棒には困ったワンねぇ。ワレにはお見通しなんだワン! 二人とも、よっくと考えて見るんだワンよ?」
『む、失礼な駄犬ですが拝聴いたしましょうか』
「いいかワン、大和はこの島に呼ばれたと聞いたワンよ?」
確かにあの赤い怪魚に見つけられたのは間違いない。
「なんか俺もそれを聞いたなぁ。そんで神釣島の管理者になったんだろう?」
「そうだワンよ。それで駄棒が言うのは人間の枠という常識だワン」
「おいおい、俺が人でなしみたいな事いうなよなぁ」
その言葉を聞き、相棒は『そうでしたか!!』と叫ぶ。
驚いて「な、なにがだよ」と聞くと、『主の体ですよ!!』とまた叫ぶ。
「や~っと気がついたワンねぇ。そう……大和は人にして人にあらず。つまり〝理〟に改変された、なんだかよく分からない〝不思議系人間ぽい〟のになったワンよ!!」
「結局わかってねぇじゃねぇかよ!? つか、人間ぽいっていうなし!!」
『そうでしたか……見た目が人族だったし、元の主とは一瞬の出会いで忘れていましたが、本来はあの体だったはず。それが今はこの蒼髪の少年になった』
「あんなステキな美中年を忘れんなよ。青山のマダムなら斜め後ろ姿だけで、ご飯三倍いけるほどだぞ?」
そうツッこむが、相棒はさらにつづける。寂しい。
『主は〝理〟に改変されたということは、今後も人の枠を超えて成長する可能性が高いということです。しかもこの神釣島の正式な管理者に選ばれた……』
「そ、それはどういうことだよ?」
『どうもこうもありませんよ。主は多分、この島の全てを制するほどのスペックに成長する可能性があります。いや、そうなるハズです。なにせあの悪辣非道な〝理〟のすることですからね』
「ちょっとまて。いや、気になっていたけど知らないふりをしていたんだ。この島ってそんなにヤバイの?」
『そうですねぇ……私もよくは知りませんが、〝理〟から少し聞いた話では、神の生体兵器があるらしいです』
「…………はぃ?」
「あ~ワレも聞いたワンよ。なんでもそいつらが、四つあるって言っていたんだワンよ」
そっと姿勢を正し正座をしてみる。
背筋を伸ばし、両手をひざの前の床につき、「実家に帰らせていただきます」と述べながら、俺は熱い涙をながす。
するとどうだろう。駄犬と駄棒がセットで「『無理』」というじゃありませんか。
世知辛い、なんて世界は世知辛いのだろ
うか!?
気がついたら人間捨てて、思い出せば終末兵器の管理者っぽくなってるの? だからこそ言ってやる。
そう、神へ届け! 渾身の「OH MY GOD!!」と。