「嫌な役、か。そうでもねぇさ……俺の地獄行きは確定だろうが、せめてこの位はさせていただきますよ、聖女殿下」

 懐から出したのは禁忌の召喚結界を破壊する魔具。
 全てが終わったら使う予定のソレを、未だ奮闘中の姫殿下の元へと投げ込んでからその場を去った。

「ハァ……地獄ってヒデェ所なんだろうなぁ。まぁそれも俺らしいか……」

 未だ激戦を繰り広げている聖女殿下を尻目に、きびすを返す。
 その時、彼女とまた視線があった気がしたが、女神の使徒たる大聖女を殺し、地獄行き確定の俺にはどうでもよかった。


 ◇◇◇


「ヴァハァ! ハァハァ……後……どれくらい……いる……の……」

 突如、悪魔共を召喚していた禁忌の結界が割れ弾け、残りの悪魔を死にものぐるいで殲滅した。
 もうどれだけ戦っていたのかも分からないほど、無我夢中に悪魔を(ほふ)り倒す。

 意識が飛びそうになりながら何とか周囲を見回すと、気がつけばもう悪魔の姿はそこになく、全て倒しきったのだと胸をなでおろす。

「よか……った。これでもう……」

 それが限界だった。握りしめていたホワイト・ダガーを手放すと、そのまま水中へと沈み始める。
 抗うことも出来ず、ゆっくりと沈む感覚と同じに、意識も深い闇へと沈んでいった……。





 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 ◇アリシアが激戦を終えた頃、夕暮れの◇
 ◇神釣島の現在はカオスだった。   ◇
 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


「よ~っし! わん太郎そこで踊れ!!」
「まっかせるんだワン! 焼き魚二連食いの舞だワンよ!!」

 滝つぼで釣り上げた、俺史上最強の香りが美味い香魚をクシに刺しつつ、それを踊りながら食べる子狐わん太郎。

 実にうまそうに食べるその姿に、ほっこりとしつつ俺も焼き魚を食べる。香うまッ!!
 こんな美味い魚だったら、美中年の俺だったらキンキンに冷えたビールが呑みたい。

 が、そんなものがここにあるわけもなく、お子様になったので仕方なくヤシの実ジュースで我慢だ。本物より甘うまッ!!

 わん太郎を頭に乗せつつ、ヤシの実ジュース一気飲み!! 
 美味い、もう一個!! でも頭の上から魚のカスを落とすの、やめていただけますぅ?

『ん~実によい新築祝いですねぇ。ちょうど明かりもいい感じな物が見つかりましたし、夜も幻想的でとてもいい』

 相棒の先端からぶら下がるのは、この辺りにポツポツと生息する光るキノコだ。
 夕暮れになったとたん、ぼんやりと光りだし、それがどんどん強くなって間接照明くらいには輝いていた。

「それな! 元・文明人としては、やっぱり夜は光が欲しいのよ~分かるだろ、わん太郎?」
「わっかるワン! ワレはえらいからして、常にライトアップが似合うんだワンよ」
『駄犬が偉いのはともかく、一日で家まで作ってしまった事に驚きましたよ』

 うなずきながら「だよなぁ」としみじみ返事をする。
 
 あれから目覚めてから相棒に起きてそうそう、『ス釣タスを見せてください!!』と言われ、勢いに負けて「お、おぅ」と言いながら開いたら、三人して『「「ふぃぃヴぁぁ?」」』とおかしな声が重なった。

 あいも変わらずのおかしな数値。それがコレだ。


 【限界になった変態釣り氏(驚)!! テメェの現在はコレダッ!!】

 【釣果レベル:89→99】

 攻釣力(こうちょうりょく):401→666
 防釣力(ぼうちょうりょく):340→555
 魔釣力(ま゛ちょうりょく):455→777
 (ちょう) (う゛ん):???→???

 (マナ)(ポイン)(ちょう): 999/999
 
 現在使用できるスキル一覧
 【人釣一体:LV3→5】
 ・ルアーの半径十センチを詳細に感知

 【変態的な器用さ:LV2→5】
 ・晩秋の季節。凍える少女が針仕事をするよりも、正確にエモノを具現化してゲットする。

 
 これを見た相棒は『もういいです……もう……何も、見たくない……』と言いながら遠くの空を見ていた。