「んあ~ピッタリとはまったんだワン!」
『いい出来です! あまり無理をしないように、休憩をしながら頑張ってください』
「まだまだ大丈夫。さて、どんどんいくぞッ!」
まずは釣り糸の強度を上げて、粘りのあるナイロンをも凌ぐ伸びと、剛性をもたせて……と。
コイツで床下から伸びる柱と、床の骨組みになる根太を結ぶ。
釘はないけど、キツク結べば強度は十分以上あるはずだ。
そしてそれが出来てしまうんだから、ゴッド・ルアーの力の万能さはスゴイ。
「イメージ通りに動いてくれよ~、行って来いッ!!」
まずは下から角材を釣り上げ、それを柱へと結び根太にする。
俺の思いをより正確に理解し、虎色のルアーは文字通り縫うように柱と角材を縛っていく。
それがものの数秒で一気に縛り上げると、また同じように角材を釣り上げては縛る。
「すっごいスピードで出来ていくんだワン!」
「まだまだこんなもんじゃないぞ? 体がやっと感覚を覚えたところだ……って事で本番、いってみる?」
一気に角材をまとめ上げ、そのまま一気に釣り上げる。
勢いよく釣り上げられた角材は順序よく落ちてくると、そのまま虎色のルアーが縫い縛る。
自分で見ていてもマジックショーみたいに、次々と固定されていくのが面白い。
あっという間に床の骨組みが出来たことで、次は床を貼って行く。
『なんという速度、なんという精度。使えば使うほど、主のルアーさばきが加速していくとは……』
「驚くのはこれからだって。お次は床を全力で貼ってやるッ!!」
毛羽ひとつない、表面がなめらかな板を次々と釣り上げては、空中へと放り投げる。
まるで孔雀が羽を広げたみたいに滞空したのもつかの間、次々とはじから急速に引っ張られて床となっていく。
その様子、まるで磁力に引かれた鉄と思えるほどに、規則性を持った動きで落ちては縛られ続けた。
「うわわ!? ぱんぱん音がして床ができちゃったワンよ~」
そう驚きながらぴょんぴょん跳ねる子狐わん太郎。ちょっとかわいい。
ならもっと驚かせてやろうと、壁となる板をさらに釣り上げると、同じように貼り付けては縛る。
どんどん上手くなっていくルアーさばきに、また釣果レベルが上がったのだろうと確信しつつ、休むこと無く一気に貼り付けていく。
気がつけば3LDKより少し広いくらいの床面積となっていた。
「ふぅ~いいできじゃね? この巨石も坪数にすれば六十坪はありそうだから、よく出来たよな」
『そうですね。巨石自体が大人が百人以上は寝れるスペースがありそうです』
「あとは屋根を作るだけだな……素材は板もいいけど、せっかくの南国だ。ここはヤシの葉っぱで作りたいな」
「んぁ~、それはとってもリゾートな家だワン」
「だろう? じゃあまずは屋根の骨組みになる垂木から作るぞ。と、その前に柱からいこう」
始めから屋根はヤシの葉で作ると決めていた。
だから屋根の骨組みは角材より丸材にして、部屋の中から見た雰囲気も重要視。
柱となる太い木材もこだわった感じにしたかったが、きれいに磨いた柱って感じが今の俺の限界か。
そう思いながら、柱も一気に引き上げて落とす。
次々と落ちてくる柱にちょっと恐怖を感じながらも、落ちてくるたびに振動が走る。
「うぉ!? ちょっと怖いなこれは」
『まぁちゃんと加工した穴へと落ちていきますし、問題ありませんよ』
「まぁそうだけどさ。っと、お次は垂木を組んでくぞ!」
壁と柱を渡しながら、丸材で屋根を作っていく。
これは床を作った時と同じ要領だから、もう慣れたものだ。
これもある程度順序よく縛り付けて、その後一気に縛り上げて傾斜の付いた形にする。
片面だけが傾斜がある建物となり、いよいよ仕上げのヤシの葉を屋根にのせる。