「んあ~大和ありがとぅだワン! でもえらいワレを助けられる栄誉を、ドヤ顔でほこるがいいんだワン」
「ハイハイえらいえらい。まったく、あんな所を走ったら危ないだろう?」
『本当にこまった駄犬ですよ』

 そう言いながら階段を上り、岩の土台ともいえるてっぺんに着く。

「本当にすごい眺めだよなぁ……」
『ええ。これを独り占めできるなんて、本当に主は果報者ですよ』
「すっごいワンねぇ。普段まじめなワレでも、お昼寝しちゃうかもしれないんだワン」

 あいも変わらずの贅沢な眺めに、三人(?)の感動の声が重なった。
 でも、わん太郎。おまえは何時も昼寝しているのが分かるぞ。絶対寝ていると確信がある。

「さて、わん太郎がさっき言ってた事への答えを見せますか」

 不思議そうに「どうするんだワン?」という、わん太郎を頭に乗せつつ木材がおいてある真上へと来る。
 
 それに「こうするのさ」といいながら、相棒を軽く振りかぶり真下へと虎色ルアーを投げる(キャスト)

 一瞬フワリと木材が動いた次の瞬間、一気に相棒を引き上げて木材を宙に浮かせる。
 そのまま糸巻き機械(リール)を高速で巻いて、勢いよく左隣へと木材を引き上げた。

「わぁ! こんなにいっぱい引き上げるなんて、大和は力持ちなんだワンねぇ」
「いやいや。子供だし、そんなに腕の力は無いってば」
「んぁ? じゃあどうして出来たんだワン?」

「それは攻釣力のおかげかな。相棒を使い続けているうちに分かったんだけど、レベルが上がればあがるほど、重いものでも軽くさばけるのよ」
「ほぇ~それは凄いんだワンねぇ」

 驚くわん太郎に、相棒はのけぞりながら得意げに答える。

『そうですよ。私が居る限り、主は苦労をしないのです』
「ってワケらしいぜ? あとは問題はここからだよな……今階段を作ったことで、またレベルも上がった気がする」
『またですか? もう驚きませんが、一応どうなりました?』

 驚かないと言う部分を強調する相棒の言葉を聞きながら、ス釣タスを開く。
 するとやはりレベルがあがっておりこんな感じだ。

 【釣果レベル:82→89】

 攻釣力(こうちょうりょく):312→401
 防釣力(ぼうちょうりょく):289→340
 魔釣力(ま゛ちょうりょく):360→475
 (ちょう) (う゛ん):???→???

 (マナ)(ポイン)(ちょう): 450/450

『またこんなに上がって……主には常識ってものがないのですかね』
「こんな所に連れてこられてから、その言葉とはさようならしたのさ」

 そんな風にはなしていると、わん太郎が不思議そうに聞いてきた。

「ねぇ大和ぉ。防釣力と魔釣力はどう使っているんだワン?」
「あぁそれなんだけど体感的に今回のヤシ木なら、暴れることもないから防釣力は使わないな。代わりに魔釣力はゴッド・ルアーを操作したり、内部に潜むコアを感知したりするのに使ったりしてるな」

『よくまぁそこまで使いこなしていますね……本当にスゴイとしか言いようがありません』
「そうでもないぞ? さっき魚を釣った時は、なぜか攻釣力も、暴れる魚からの対抗するはずの防釣力も働いた気がしなかったし」

『あぁそれは主が純粋に〝釣りを楽しみたかった〟からですよ。自分が必要と感じたら無意識に使うものですからね』

 その言葉に「そういうものか……」といいながら納得する。

 さて、あとはこの木材をどうするかだな。
 積み上がる木材は、板状に加工したモノばかり。
 あとは柱となる部分と、屋根の骨組みになる垂木(たるき)用に木材もほしいな。

 さっきは練習で小さいヤシの木だったが、三十メータークラスの大きいのもあるから、それを使えば間に合うだろう。

 糸はMP釣があれば無限に出せると言っていたし、残りはまだまだ余裕があるからいけるだろう。
 建物のイメージも完璧に出来たし、あとは俺が釣るだけだ(・・・・・・・)