『いいですか主、抜けるとは釣り上げたという事です。ですが主は今、岩自体をくり抜いてしまった。それは本来のスキル内容ではありません』
「まぁそれは分かるよ。〝器用貧乏〟は対象から釣り上げた中身を、具現化して使用できるようにするスキルだよな」
『そうです。もう一度言いますが、今回は岩自体をくり抜いてしまった。それは出来ないのです』
相棒の言葉に、ふんぞり返りながら「ふふん」とドヤりながら話す。
「べつに岩をくり抜いたわけじゃねぇって。いいか、この岩は何で出来ている?」
『岩の素材……ッ、まさかッ?!』
「そう、コイツは砂岩だ。その中から石英と長石を〝器用貧乏〟で弾いて固めた後、泥にちかい砂のみを、まとめてブッコ抜いたってわけさ」
『あ、ありえません。そんな使い方ができるなんて……』
絶句しつつ現実を認識しつつ在る相棒。
「それが出来ちまうんだから、仕方ないっしょ?」
『い、いえ。私はこのスキルの管理者ですから、その特性は誰よりもよく知っています! 〝スキル:器用貧乏〟は、そんなに汎用性の高いものではありません。むしろ失敗する確率が高いのです!』
そうまくし立てる相棒。
さらに聞けばどうやら本当らしく、良くて俺が最初に作った布程度のモノが出来ればいいそうだ。
確かにその話しなら理解も出来る……が、残念ながら出来てしまう。
特にあの赤金草から七色の調味料を釣り上げた時から、モノに宿る中心核が分かる気がする。
これはつまり――「――才能ってヤツっすね」と、ドヤ顔で言うと相棒が、『そう思います』としおらしく言う……。
このあと天からサメでも降るんじゃなかろうか?
そんな事を思っていると、相棒がブツブツと何かを言いながら、一つの答えにたどりつたようだ。
『もしかして……主、ス釣タスを開いてください!』
「なんだよいきなり?」
『いいから早くはやく! そして〝器用貧乏〟の項目を見てください!』
「わ、わかったよ。出てこいス釣タス! えっと器用貧乏は……あれ、ないぞ?」
俺の言葉に食い入りながら、ス釣タスを覗いてくる相棒。
竿の先端を曲げて、そんな必死に覗かなくてもいいと思うのだが。
なんて思っていると、『あ゛?!』と耳元で奇声をあげる。ホントうるさい釣り竿だよ。
そして今日なんどめかの『ありえない』を聞いた後、静かに話し始める。
『主よ、消えたのではありません……器用貧乏があった場所。そこをよく見てください』
「んんん? あれ? 〝変態的な器用さ:レベル2〟になってる! つか、ネェミングゥ??」
よく見れば〝人釣一体〟もレベルが3になっている事に気がつく。
「なんか色々と数値がアップしてるんだけど?」
『やはり……いいですか主。元々レベルもおかしかったですが、今は82です。具体的に言うと――』
そういうと相棒はス釣タスの一部を竿先で押すと、空間に立体的に内容が浮かび上がった。
【変態釣り氏(わらい)!! テメェの現在はコレダッ!!】
【釣果レベル:71→82】
攻釣力:129→312
防釣力:113→289
魔釣力:222→360
釣 運:???→???
MP釣: 260/300
現在使用できるスキル一覧
【人釣一体:LV3】
・ルアーの半径十センチを詳細に感知
【変態的な器用さ:LV2】
・晩秋の季節。凍える少女が針仕事をするよりも、正確にエモノを具現化してゲットする。
※器用貧乏は、変態ヤロウが酷使したために喰われました(ヘンタイさんめ)
以上のことより、〝器用貧乏〟は〝変態的な器用さ〟へ統合されました。
【???】
【??????】
【??????】――以下略
釣XP:25350/138000
「……もう意味がわからないんだけど? 大体なんだよ、変態的な器用さって!? しかも効果の説明がもっと意味が分からんうえに、ここは南国の島で、俺は南国少年だってばよ!!」
『なぜ少女? い、いやそこはどうでもいいのです。効果を見てください』
「だから南国娘だろ? 今度生まれ変わる時は〝理〟に言っといてくれ。ハイビスカスが似合う娘でヨロって」
そう言うと相棒は、呆れながら『その後です』と言う。