それから俺とわん太郎は、思う存分光る怪魚を楽しむ。
 風味を変えてみたりしたが、やっぱり最初に決めた味がよく、気がつけば綺麗に完食していた。
 こんなに美味いと思える食事をしたのは久しぶりだし、腹も心もみたされた。

「んぁ~。ぽんぽんがいっぱいになったんだワンよ~」
「ぷっは~、すっげぇ生き返った!! なんだろう……そう、生まれ変わった気分だ」
『まぁ文字通り生まれ変わっていますしね』

 腹天で転がるわん太郎をなでつつ、相棒の言葉を考える。
 子供になってしまった体。そしてこれから始まるこの無人島での生活。

 それらに不安は無いと言えば嘘になるけど、寂しくはない。
 天の破片と呼ばれるゴッド・ロッドたる相棒。そして変な子狐、わん太郎がいるのだから。
 まぁ人が恋しくなる日もくるかもだけど、それはしばらく先の事になりそうだ。

 それにこの神釣島は封印されていたらしいし、誰もやっては来ないだろうしな。
 そう考えるとやっぱり少しさみしいかも……。

『……貴方様が朽ちるまで、嫌と言ってもずっとお側におります。まぁ迷惑かもしれませんが、よろしくお願いいたします』
「んぁ~ワレも大和が好きだから、この島で隠れ住む(・・・・)んだワンよ~」

 俺の表情が物悲しそうだったのか、二人(?)はそう言いながら近寄ってくる。
 相棒は自然と俺の左手におさまり、わん太郎はよじよじとヒザの上にのぼって来て丸まってあくび。
 そんな二人に感謝しつつ、「これからよろしくな!」と元気に応える。

「そうと決まればこれからの事だよな。幸いこの島の気候は今のところ南国と言っていいから、衣・食までは大丈夫そうだ」

 そういいながら相棒を三回振り、ヤシの木に似た実がある部分へとルアーを投げる。
 もう使い心地にも慣れ、なんの気負いなしに頭ほどの大きさの木の実を引っかけて、おもいきり足元へと引きよせた。

 と、同時に〝スキル:器用貧乏〟をつかって実の繊維をストロー状にし、ヤシの実を足元へと落とす。
 ちょっと穴があいたストローだけど、まぁそれなりに飲めるだろう。

「よっ。こいつで水もとりあえず大丈夫っしょ……っと、甘ウマー♪ ほのかな酸味とくどくない甘みが最高に美味い!」

 それを聞いたわん太郎が「ワレも~」と言いながら、肩までよじ登ってきたから飲ませてみる。
 起用にストローを〝ちゅぅちゅぅ〟すすりながら、「甘ウマー♪」と喜んでいるの見てほっこり。
 そんな様子をみた相棒は、『やれやれ』と言いながらも優しげだった。

『時に主。ス釣タスはどうなっています?』
「ん? どうしたよいきなり」
『今も釣り上げながら、スキル:器用貧乏を使った……つまり(マナ)(ポイン)(ちょう)が回復しているはずです』
「そうなのか? いや……言われてみると確か体の中にある、力みたいなのが回復している気がする」
『でしょう? それが先程、主が気絶した理由かと思います』

 気絶した原因、か。確かに気絶しすぎだよな。
 もしこのまますぐに気絶を繰り返すことになれば、自然相手に生きていくのもヤバイ。
 だから迷わず「ス釣タス!」と、今の状況を確認した。

「たしかに回復しているけど、増えてねぇかコレ? (マナ)(ポイン)(ちょう)は最初見た時、最高値が99だったはず。それが今じゃ200になっているぞ?」
『今……なんと?』
「だから200だよ。今はMP釣の残量が、185/200になっている」

 そう言うと相棒は『ありえない』と呟き、数秒だまった後に話し出す。

『いいですか主。主のこれまでの釣果という経験をまとめたのが、その手にあるス釣タスです。中年オジになるまで釣りに没頭し、得た結果がMP釣が99です』
「中年オジ言うなし! でもまぁ……そうだよな。あそこまで釣りをして99だもんな。それが今じゃ200と考えると、コレまでの経験はなんだった? って話になるよな」
『はい。しかも一時間過ぎたかどうかと言った所で、全回復しています』

 相棒の考察はつづき、それがいかに異常な事なのかを思い知る。