「え、どうするんだよ? 調理器具はなにもないぞ?」
『それにお答えするまえにお聞きしますが、もしそのハーブから山椒風味を抜ける(・・・)としたらどうでしょう?』
「そうだな……うん、いけると思う。赤金草の苦味はお子様な俺の舌にはちょっとアレだが、まぁそれも調味料の一つとして考えればいけそうだな」
『ならばやる事は一つです。主の思うままに狙った獲物を――』

 そこまで聞いただけで心がはねた。だから続きを被せて口角を上げながら言う。
 そう、「釣り上げちまえばいいんだな?」……と。

『そのとおりでございます。確認ですが、(マナ)(ポイン)(ちょう)は残り五十ですね?』
「ああ、残り五十だな。それでどうしたらいい?」
『まずは糸の先にあるゴッド・ルアーを小さく。具体的には五グラムほどの金属で出来た小魚(メタルジグ)になるように、イメージしてください』

 相棒の言葉に「わかった」とうなずくと、最近買ったことのある安いが高性能のメタルジグを思い出す。
 それの形に酷似した形を頭に思い浮かべた瞬間、またあの力が抜ける感覚を覚えて「つぅ」と息が漏れた。

「俺の思い通りの形になったぞ……マジかよ、ゴッド・ルアー凄すぎだろ! それにしてもあの妙な感覚はなんだ?」
『それは(マナ)(ポイン)(ちょう)が消費された時に感じる倦怠感(けんたいかん)に似たものです。MP釣はどうなりましたか?』

 すぐにス釣タスを開き残量を確認すると、十五も減っていた。

「残りは三十五だな」
『流石は主です。意外と消費が少ないですね。本来ならもっと消費してもいいのですが』
「そういうものか……それでどうする? 早く釣りてぇ~」
『ハァ~その釣りへの情熱は別の意味で(・・・・・)流石デスネ。尊敬の眼差しを返して頂きたいものですねマッタク。では先程と同じ要領で、草の中から山椒のイメージを強く釣り上げて(・・・・・・・)みてください』

 そう相棒が言う頃には、俺はすでに準備が整っていた。
 なぜか分からないが、あの赤金草に含まれている〝モノの本質が見える〟気がしたからだ。

 それは誰に教えてもらったワケでもなく、出来て当たり前と思えた。
 だから左足がもつれたら勝手に右足が出るように、自然にどうしたらいいかが分かる感覚。
 つまり〝ソコに山椒たちの感覚を具現化した存在がある〟と、ハッキリと分かる。

 そうと分れば、後は奴らを釣り上げるだけだろ?
 
「そこに潜んでいるな……捉えたぜ! 行ってこおおおおおおいッ!!」

 相棒を思いっきり背後へとしならせながら、赤金草の中へとメタルジグを投げ込む。
 草束の中へと〝ざくり〟と突き刺さるように飛ぶメタルジグ。
 次の瞬間、強烈なインパクトが釣り糸(ライン)から相棒へと伝わり、俺の両手に伝わった瞬間、釣り人(アングラー)の本能が「フィィィッシュ!!」と叫ぶ。

 ヌルリと赤金草の中から釣り上げたのは、七色に輝く魚の群れ。
 いや、よく見ると七匹の魚全ての色が異なり、それが虹みたくみえたと分かった瞬間、採取しておいたバナナの木によく似た葉っぱの上に落ちてくる。

 それが葉っぱの上に落ちたと同時に、七つの粉状になったモノが積み上がった事で赤金草の中から潜んだ獲物を釣り上げたのだと分かった。

「ッゥ~、よっしゃあああ! 完全勝利ッ!! どうだ見たか相棒?! これが俺の実力ってや……つ、だ……アレ?」

 そう言った瞬間、急激に目の前が暗くなり気が遠くなる。
 ちょっとマテ。一体俺は一日何回気をうしなえばすむんだ? と思ったのが最後、また暗闇に飲み込まれた。


 ◇◇◇


『そ、そんな馬鹿な……』

 私へドヤった直後、主はまたしても気を失ってしまう。
 それも当然だろう、きっと今頃は主のMP釣は0のハズだから。
 だが私が驚いたのはもっと違う理由からだ。 

『一体なにをどうやったらこんな結果になるというのです……』

 絶句した先にある光景。
 それは不器用だがそれなりに精製された、色が異なり香りが違うもの――つまり七つの香辛料の小山が出来ていたのだから。