『まぁ別にいいじゃないですか。もともと変態釣り師ですし、今更もう一つ露出狂の称号が加わっても』
「よくないし、はずかしいですし、そんな称号いらねぇし。まずは服屋を探そうぜ?」
『そんなモノはありませんよ。仕方がない、私を持ってそうですね……あぁ、あの木の幹なんかが良いでしょうか』
相棒の先端が指す場所。そこあったのはバナナの木に似たものだが、実が無いものであり、青々と水分を豊富に含む植物だった。
「まさかあの葉っぱで、シークレットな秘密を隠せとか言うんじゃねぇだろうな? なめるなよ駄棒。そこまで落ちぶれるくらいなら、南国少年らしくマッパで生きていく!」
『ハァ~。落ちぶれる前に、あの柔らかそうな部分へ向けて私を振り抜いてください』
なにを言っているのかが理解ができない。まぁどうせあの面積が大きめな葉っぱをルアーで引っ掛けるつもりだろうが。
とはいえ俺もプロの大人だ。だからこそ「はいはい」と余裕をみせつつ、適当に黄金の小魚の形をしたルアーを投げてみる。
「これでいいのか? って、マテ。何か変だぞ!?」
バナナの木に似たみずみずしい茎の部分へルアーを放り投げた。
瞬間、相棒のスキル〝人釣一体〟が発動し、木の中から何かを釣り出す感覚を感じる。
それはまさに〝魚をHITした時と同じ感覚〟であり、釣り師の性なのか「フィィィィッシュ!!」と無意識に叫ぶ。
さらに状況は続き、驚いた事に何やら見たこともないモノを釣り上げた。
しかもそれは細長い糸みたいなものであり、そいつが相棒を思い切り引くと同時に足元へと大量に重なりあう。
「な、なんだよこれ。糸……なのか?」
『お~、まさかここまで採れるとは。流石は釣りバカたる主。普通はここまで釣り上げれませんよ』
「ほめてんのか、けなしてんのか、ハッキリしてほしいのですがね。で、これはなんだよ」
『それはあの木の茎ですよ。まぁ正確に言えば繊維といったほうが良いでしょうか』
そっと足元の、うす黄色い糸を手に持つ。繊維と言うと硬いイメージだったが、驚いたことに絹の糸みたいな肌触りと、何とも言えない爽やかな香りがした。
「マジかよ……俺はこんな糸まで釣り上げる事ができるようになったのか」
『そうです。私の所有者になった事で、色々と釣れるようになりました。今はまだ主の力が幼いので、釣れるものは限られていますが、今後は色々と釣れるでしょう。まずは〝ス釣タス〟を開いてください』
色々と未知のナニカが釣れる。
それだけで期待が高まり、いいようのない興奮を押さえ、ゴクリと生唾を飲み込みつつ「ス釣タス!」と叫ぶ。
目の前に浮かぶ不思議な枠……というより、デカイ本。
さっきはいきなり俺の釣り姿が映像化されていて、興奮していたから目に入らなかった。
しかしよく見れば、かなり古くさいが作りがしっかりしているモノだ。
今回はその本自体が閉じていて、表紙をはじめグルリと全てが見え、その質感にも感動をした。
なんの皮か分からないが、しっとりとした赤い動物の皮に、角が黄金色で豪華な金具がついているのが凄い。
『そんな馬鹿な……』
「ん? どうした」
『いえ、それよりまずは釣果レベルという所を見てください。そう念じれば、そのページへと飛びます』
とりあえず「わかった」と頷き、それを左手に持ち釣果レベルを教えてくれと念じると、該当ページまでかってに開く。
するとそこにあったのは見慣れない言葉が書いてあった。
「んんん? 釣果レベルが60になってるぞ。その他にも色々書いてあるけど、スゲェ腹が立つ!」
よく最初から見れば、なにやらムカっとくる感じにこう書いてある。
一番最初に〝おい! 釣り○○!! テメェの現在はコレダッ!!〟から始まり、○で隠れている分余計に気になってしまう。
きっとロクな事ではないのだろうと思いながら、そこに書いてあるものを最初から見た。