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〇街の治療所 ロイの病室(昼)

ベッドで横になっているロイ
椅子に座っているジェン

〇回想に突入 ロイが過去を思い出す

〇回想 異世界の施設内

恐怖の表情を浮かべて必死に廊下を走るロイ

ロイ、研究室に駆け込んで非常用のボタンを押す

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研究室内に通信の音声が響く
研究員Aの声「おい、非常用のボタンが押されてるぞ!」
研究員Bの声「あのザコ野郎、オレたちごと化け物を消滅させる気か!」

ロイ、ブルブルと震えて床に座り、両手で頭を抱える

〇回想終了

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〇街の治療所 ロイの病室(昼)

険しい表情で宙を見つめるロイ

ジェン「オレも酷い目に遭いました」

ロイ「異世界に行ったのか!?」

ジェン「はい、もう二度と行きたくありません」

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ロイ「歴戦の勇者たちも異世界に行ったが、誰も帰ってこれなかった」

ジェン「亡くなったんですかね?」

ロイ「ああ。彼女に聞こえている死者の声を消すには2つしか方法がないらしい」

ジェン「それは?」

ロイ「モブキャラを殺した敵を倒すか、異世界に行った者の魂が消滅するかだそうだ」

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ジェン「どうして異世界のことを教えてくれなかったんですか?」

ロイ「オレの無様な話を知られたくなかったんだ。すまなかった」

ジェン「いえ、異世界の敵を倒すというのは解決策にならないので」

宙を見つめるジェン

ジェン「ロイさんは気が狂いかねないほどの痛い思いをしたことがありますか?」

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ロイ「・・・ないな。耐えきれず呻くほどの激痛とかはあったが」

ジェン「そうですか」

溜息をつくジェン

ジェン「物語の主人公たちは傷ついても何度でも敵と戦いますけど・・・」
ジェン「そんな痛い思いをしたことがないから戦えるんです」

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〇レモネード家 (昼)

豪邸の廊下を歩くルイス

ルイス「!」

頭の中で異世界の光景が流れる

トムが雷でゴブリンたちを殺している場面が脳裏をよぎる

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ゴブリンの悲痛な声が頭の中で響く

ゴブリンCの声「助けてくれ! 転生者に我々の仲間が皆殺しにされる!」

不快な表情を浮かべるルイス
ルイス「っ・・・なんで!? 早すぎる!」

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〇街の治療所(夕)

巫女がテンシーの額に手を当てる
テロップ『世界最高の巫女 ヒミコ・シャーマン』

その様子を見守るジェン

ヒミコ「呪いが解けました。明日の朝には目が覚めるでしょう」

テンシーの額から手をはなすヒミコ

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ジェン「よかった!」

ヒミコ「ワタクシは世界最高の巫女なのでわかります」

ジェンを見るヒミコ
ヒミコ「あなたは悪魔の呪いで呪男(じゅなん)となっています。どんな方法でもその呪いは解けません」

ジェン「・・・ですよね」

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ヒミコ「では、ワタクシは帰ります」

ジェン「お金は魔王討伐の報奨金を受け取り次第すぐに振り込みますから」

ヒミコ「お金はいりません。人類を救ってくれたお礼として呪いを解いたのですから」
去っていくヒミコ

ジェン「・・・ありがとうございました!」

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テンシーの寝顔を見つめるジェン

ナレーション『テンシーちゃんは赤ちゃんの頃に両親を失ったらしい』

医者からテンシーの情報が書かれた書類を渡されるイメージ

ナレーション『だから施設で育ち、半年前に養子として引き取られたそうだ』

テンシーの書類に目を通しているジェンのイメージ

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ジェン(身寄りのないテンシーちゃんは施設にもどることになるのか・・・)

じっとテンシーの寝顔を見つめるジェン

ジェン(まあ、平和な世界になるし、メインキャラだから輝かしい未来がまっているはずだ)

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〇ジェンの部屋(夜)

ベッドで横になっているジェン

ルイスの姿を思い出す
ルイスのセリフ「あなたしか救えない人たちを見捨てるの!?」

ジェン「・・・」

布団をかぶるジェン
ジェン(・・・本当に怖いし、死ぬほど痛いんだよ、マジで!)

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中年男性の姿が思い浮かぶ
中年男性のセリフ「あなたのおかげで、妻と赤ちゃんは助かりました」

ルイスの姿が思い浮かぶ
ルイスのセリフ「もういやだ・・・助けて」

ジェン「・・・」

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ベッドから勢いよく起き上がり、玄関へ走っていくジェン

ジェン、そのまま外へと走って出て行く

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〇レモネード家の近くの道(夜)

一人で自宅に向かって歩いているルイス

前方にジェンが立っている

ジェンの姿がルイスの視界に映る
ルイス「!」

ルイス、顔を伏せてジェンの横を通り過ぎる

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ジェン「オレ、やるよ」

ルイス「!」

ルイス、驚いた顔で振り返り、ジェンを見る

ジェン「何も悪いことしてない弱者の人生が強者の都合で奪われるなんて、許せないし」

ルイス「・・・そうよね」

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ジェン「また異世界から声が聞こえたら教えてくれ。1ヵ月に1度が理想だけど」

ルイス「もう聞こえてるの」

ジェン「!・・・そんな頻繁に聞こえるのか?」

ルイス「ううん、ふつうは1ヵ月に1回くらい」

ジェン「そっか」

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ルイス「今回はモブキャラのゴブリンを救わなければいけない」

ジェン「!?」

ジェン「ゴブリンって・・・悪い奴だろ。魔王軍に属して、勇者の邪魔ばかりしてきたよな」

ルイス「・・・」

ジェン「ゴブリンなんかのために戦うなんて・・・」

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〇街の治療所 ロイの病室(朝)

床に立ってストレッチしているロイ

ジェン、病室の中に入ってくる

ジェン「もう立てるんですか?」

ロイ「もう歩けるし走れるよ」

ジェン「オレ、異世界で悪者を倒すことに決めました」

ロイ「なぜだ?」

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ジェン「目の前で苦しんでいる人に助けを求められたら、オレは無視できないみたいです」

ロイ「・・・そうか」
ロイ「すまないが、オレは力になれそうにない」

ロイ(もうあんな思いは二度と・・・)

ジェン「マリフォードさんにはお願いしたいことがあって」

ロイ「なんだ?」

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ジェン「もしオレが異世界から帰ってこれなかったら・・・」

ロイ「・・・」

ジェン「魔王退治の報奨金をテンシーちゃんの財産になるよう手配してほしいんです」

ロイ「わかった」

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〇街の治療所(朝)

テンシーが眠っているベッドの側にある椅子に座っているジェン

天使のような寝顔のテンシー

ジェン、テンシーの寝顔を見つめる

目が覚めてゆっくりと瞼を開くテンシー

ジェン「!」

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上半身を起こすテンシー

ジェン「テンシーちゃん・・・」

テンシー「・・・新聞屋のお兄さん?」

ジェン「うん」

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思わず涙がこぼれるジェン

テンシー「お兄さん、泣いてるの? 大丈夫?」

ジェン「う、うん、大丈夫」

テンシー「本当に?」

ジェン「うん、本当に大丈夫」

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周囲を見回すテンシー

テンシー「ここどこ?」

ジェン「病院だよ・・・テンシーちゃん、ケガしたから」

驚いた表情を浮かべるテンシー
テンシー「私、ケガしたの?」

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ジェン「でも、もう大丈夫。ケガはなおったから」

ほっとした表情になるテンシー
テンシー「よかったー」

テンシーを見ながら微笑むジェン

ジェン(ああ、この子を見てると本当に癒される)

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テンシーを見つめるジェン
ジェン(またテンシーちゃんと話すことができて本当によかった)

ジェン「テンシーちゃん」

ジェンを見るテンシー
テンシー「?」

ジェン(ずっと、この言葉を君に伝えたかったんだ)

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笑顔を浮かべたジェンと見つめ合うテンシー

ジェン「生まれてきてくれてありがとう」

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無邪気に笑むテンシー
テンシー「うん!」

満面の笑みを浮かべる純真無垢なテンシーの姿を見つめながら涙目になるジェン

ジェン(本当にありがとう)
微笑むジェン