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〇真っ白な空間

向き合っているジェンと悪神

ジェン「・・・闇の力?」

悪神「そうだ。強力な魔の力」

悪神の姿を見つめるジェン
ジェン「・・・その力を手にしたら、化け物みたいな姿になるんですか?」

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悪神「安心しろ。自我や姿形に変化はない」

悪神「禁じられた悪魔の呪いをかけることによって、貴様は生き返ることができる」

ジェン(間違いなくヤバイ方法だろ・・・)

悪神「同時に強力な力を手にすることになる」

悪神「貴様を殺した魔王も倒すことができるかもしれないぞ」

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ジェン「闇の力とか悪魔とか呪いとか、なんでヤバそうなことをわざわざ言うんですか?」

悪神「本当のことを伝えなければ力を与えられないからだ」

ジェン「なにか代償があるんですよね?」

悪神「力を与えてみないことにはわからない」

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ジェン「死んだあと地獄に落ちるとか?」

悪神「生物は死ねば、この空間にくるか魂が消滅して無になるかだ」

ジェン「・・・」

悪神「こうしている間にも世界の時間は流れている」

ジェン「!」

悪神「魔王が勇者を倒して街を全て破壊してしまうぞ?」

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ジェン「今、勇者と魔王の決闘はどうなってるんですか!?」

悪神「ここからでは私も知ることができない」

ジェン「じゃあ、ここから出て教えてください」

悪神「無理だ。貴様が生き返って確かめるしかない」

ジェン「・・・」

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ジェン「でも、世界最強の勇者ならきっと・・・」

悪神「断言しよう。勇者よりも魔王の方が強い」
悪神「魔王が勝つだろう」

ジェン「っ・・・」

悪神「街が破壊されれば、あの娘も死ぬだろうな」

ジェン「!」

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テンシーの姿を思い浮かべるジェン

悪神「どうする?」

決意した表情になるジェン
ジェン「魔王を倒したいです! オレに力をください!」

悪神「では、闇の力を授けよう」

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〇街(夜)

死にかけているロイと少し負傷しているベネス

ベネス「爆発に耐えながらオレ様とここまで戦ったことは褒めてやろう」

ロイ「くっ・・・」

ベネス「次でとどめを刺す。最期に言い残すことはあるか?」

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息も絶え絶えのロイ
ロイ「・・・い、いつかオレを超える勇者が必ず現れる」
ロイ「その時がおまえの最期だ、ベネス」

ベネス「ありえん。オレ様は永遠に進化し続ける。ゆえにオレ様に最期はない」
ロイに近づいていくベネス

ロイ(すまない・・・ルーク、ソフィア)
ロイ(魔王を倒す約束、果たせなかった)

ベネス「人類はオレ様が絶滅させる。さらばだ」

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倒れている人々の場所から強い光が発せられる

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ジェンが光り輝きながら現れる
爆発によって負った傷がなくなっており、焼けて破けたはずの服が元通りになっている

光の方を見るロイとベネス
ロイ「!?」
ベネス「・・・なんだ?」

ジェンの体を纏う光が消える

ジェンの姿を見据えるベネス
ベネス「貴様、何者だ?」

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ジェン「モブキャラのジェン」

自分の着ている服を両手で掴むジェン
ジェン「魔王様のファンです。服にサインしてもらってもいいですか?」

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ベネス「オレ様のファンだと?」

ジェン「・・・はい、だから魔王様のサインがほしいです」

魔生物がジェンの体に巻き付いた形で出現する

ベネス「人間ごときに、それもモブキャラのためにサインなどするわけがない」
指を鳴らすベネス

ジェンの体に巻き付いた魔生物が爆発する

ジェン「うっ・・・」

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ジェン、びくびくしながら自分の体を見る

服は破けているがジェンの体は無傷である

ジェン、ほっとした表情を浮かべる

ベネス「なんだと・・・」

驚いた表情のロイ
ロイ「嘘だろ」

ジェン「・・・」

〇回想に突入 ジェンが真っ白な空間での出来事を思い出す

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〇回想 真っ白な空間

ジェンと悪神の前に女の子の姿の小悪魔が出現する
テロップ『小悪魔 リリー』

リリーの姿を見つめるジェン
ジェン(名前がわかる。メインキャラだ・・・この子も神なのか?)

リリー「悪魔の呪いをかけられた不幸な青年よ」

ジェン「・・・」

リリー「君が手に入れた闇の力について説明するね」

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リリー「ダメージを負って死ぬごとに、敵を倒す難易度が下がっていく能力を君は得た」

ジェン「え・・・」

リリー「毎回死ぬと、敵を破滅させるためにクリアしなければいけない条件が提示されるの」

ジェン「・・・毎回死ぬ?」

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リリー「ジェンは死ぬたびにこの空間に来て、何度でも生き返ることができるってこと」

悪神「貴様が完全に狂うまでな」

ジェン「?」

リリー「それで、痛みを感じて死ぬたびに敵を倒すための条件が簡単なものになっていく」

ジェン「じゃあ、魔王を倒すための条件は?」

リリー「今回の条件は魔王にビンタすること」

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ジェン「魔王の顔に平手打ちできれば・・・」

リリー「魔王を破滅させることができる」

ジェン「って・・・あの爆発させる攻撃があるから近づくことすら無理だろ」

リリー「今回、ジェンの体は魔王の爆発能力を無効化できるようになってるよ」

ジェン「・・・」

〇回想終了

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〇街(夜)

ベネスを見るジェン
ジェン(オレが魔王を破滅させる!)

ベネスに近づくため歩いていくジェン

ジェン(まずはサインを理由に接近する)

ジェンの体に魔生物が巻き付いた状態で出現する

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ベネス、指を鳴らす

ジェンの体が爆発する

何度も爆発が繰り返されるが、ジェンの歩みは止まらない

魔生物を出現させるのをやめるベネス
ベネス「・・・」

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ジェン「服が破けちゃったんで体にサインしてくださいよ」

ベネス(体の頑強さがモブキャラのそれじゃない)

ジェンに手の平を向けるベネス

魔王の手の平からパリパリと黒い電気が発生する
ベネス「跡形もなく消し飛べ」

ロイ「よけろ!」

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ベネス「ブラックショック」
魔王の手の平から巨大な黒いエネルギー波が勢いよく放出される

ジェン「ひっ!」

黒いエネルギー波が直撃したジェン、街の外の荒地まで消し飛ぶ

ベネス「モブキャラでは避けきれないだろう」

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〇真っ白な空間

目が覚めるジェン

ジェン「なんだよ、あの技! 痛いなんてもんじゃなかったぞ・・・」
苦悶に満ちた顔のジェン

リリー「次の条件は魔王を街から追い払え」

ジェン「ビンタより難しくなってるだろ!」

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リリー「その代わり、魔王と同じ黒のエネルギー波を放出できる力を獲得してるよ」

ジェン「オレがあの技を使える!?」

リリー「でも魔王の爆発能力に対する耐性はなくなってるから、気をつけてね」

ジェン「毎回、得られる力が変わるのか・・・」

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〇街(夜)

ベネス、ロイの方に顔を向ける

ベネス「次はおまえだ」

荒地から光が放たれる

ベネス「まさか・・・」

光の中からジェンが現れる

ベネス「奴は、いったい・・・」

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ジェン、ベネスに向かって手の平を向ける

ベネス「?」

ジェンの手の平から黒い電気がパリパリと発生する

ジェン「サインはもういらねえよ。死ね、この野郎!」

ベネス「馬鹿な・・・」

ジェン「ブラックショック」

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ジェンの手の平から巨大な黒のエネルギー波が勢いよく放出される

ベネス「くっ・・・」

両手を使って自分に向かってくるエネルギー波を直角にそらすベネス

自分の手を見つめるジェン
ジェン(いける! これなら魔王を追い払うこともできる)

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ベネス、即座に小刀を取り出し、物凄い力でジェンに向かって投げる

ロイ「危ない!」

ジェン「え?」

遠くから飛んできた小刀がジェンの心臓を貫く
ジェン「ぐわあああっ!」

地面に倒れて苦しむジェン

ベネス「刃物はきくようだな」
ジェンの倒れている場所に翼を広げて向かって行くベネス

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〇真っ白な空間

目が覚めるジェン

ジェン「ここに来れば痛みを感じなくなるけど・・・あんな激痛、もう二度とごめんだ!」

リリー「じゃあ、次で勝たなきゃね」

ジェン「さすがにもう魔王を簡単に破滅させられるような条件になってるよな!?」
すがるようにリリーを見るジェン

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リリー「そんなのわからないよ」
笑って答えるリリー

意気消沈とした表情に変わるジェン
ジェン(立ち向かう心が折れそうだ・・・)

テンシーの笑顔が思い浮かぶ

弱気な思いを消すように首を振るジェン

リリー「次の条件は―――」

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〇荒地(夜)

光を放ちながら現れるジェンを見つめるベネス
ベネス(復活するか・・・)

ジェン(この作戦なら魔王を倒せるはずだ!)

ベネス「面倒だな。次で決着をつけるとしよう」

ジェン「なに?」

ベネス「貴様がどんな能力をもっていようとな・・・」
不敵な笑みを浮かべるベネス