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〇異世界 平地(昼)

磔にされてガチガチと震えているジェン

トム「時間をもどしたのも、てめえか」

トム、地面に落ちていた小刀を拾ってジェンに投げつける

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遠くから飛んできた小刀がジェンの太ももに突き刺さる

ジェン「ぐああっ・・・」

トム「さっきと違って痛いらしい。これで廃人にできる」

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ジェン「・・・か、雷をオレに落としてみろっ」

トム「オレを殺そうとしたんだ、楽には死なせねえ。精神的に壊れるまで痛ぶったあと殺す」

絶望した表情になるジェン
ジェン(終わりだ)

ブルブルと震えながら目を固く瞑るジェン

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何かが上空からジェンの方へ迫ってくる

ジェンの目の前で何かが地面に落ちたような大きな音がする

攻撃を受けたと思って目を強く瞑るジェン
ジェン「っ・・・」

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磔にされたジェンの周囲に砂埃が舞っている

痛みがなく、恐る恐る目を開くジェン
ジェン「・・・」

目の前に一人の女性の後ろ姿が見える

ジェン「!?」

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二十代くらいの絶世の美女がジェンに背を向けて立っている

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女性の後ろ姿を見ているジェン
ジェン「テンシー・ラルファータ・・・テンシーちゃんなのか?」

笑顔で振り返るテンシー
テンシー「はい!」
テロップ『天女 テンシー・ラルファータ』

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ジェン「どうしてここに・・・それに、その姿は・・・」

テンシー「話は戦いが終わったあとにしましょう」

トムの方を見るテンシー

テンシー「これからは私がジェンさんの力になります」

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ジェン「テンシーちゃん・・・」

テンシーの姿を見ているトム
トム「ほー、こりゃ見たことないくらいの美女だ。オレの女にしてやるよ」

テンシー「お断りします」

テンシー、重ねた両手を遠くにいるトムに向ける

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テンシーの後ろ姿を心配そうに見つめるジェン

テンシー「心配しないでください。私が倒しますから」

ジェン「え・・・」

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テンシーの両手から透き通る青色の巨大なエネルギー波が勢いよく放たれる

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トムに向かってくる青い巨大なエネルギー波

トム「・・・ほう」
冷静な表情のトム、胸の前で腕をクロスする

トムの体を透き通るような青色のエネルギー波が通り抜ける

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その場で崩れ落ちて地面に倒れるトム

ジェン「!?」

テンシー「終わりました」

磔のような状態が解けて、地面に着地するジェン

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ジェン「テンシーちゃん、油断しちゃダメだ!」

テンシー「!」

ジェン「あいつは幻を見せるような能力をもってるかもしれない」

テンシー「幻ですか」

ジェン「さっき、オレが背後から小刀であいつの胸を貫いたんだ」
倒れているトムの姿を見るジェン

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ジェン「でも刺されたあいつの体は消えて、いつの間にか背後にあいつは立ってた」

テンシー「なるほど」

ジェン「それに魔王が使うエネルギー波を正面から受けてもあいつは無傷だった」

ジェン「倒されたふりをしているだけかもしれない」

テンシー「わかりました」
青色のエネルギーで剣をつくりだすテンシー

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ジェン「あと特殊能力を封じる力をもってる」

テンシー「能力を封じる?・・・それは脅威ですね。発動条件はわかりますか?」

ジェン「わからない。人差し指を向けられたら能力を使えなくなった」

テンシー「人差し指を向けるだけでは発動しないと思いたいですけど」
冷や汗を浮かべるテンシー

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ジェン「でもチート能力だから・・・」

テンシー「複数人の能力を同時に封じることができるとしたら・・・やばいですね」

ジェン「あと落雷や爆破や動けなくする力とか他にもたくさん能力をもってて・・・」

テンシー「・・・」

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ジェンとテンシー、周囲を見回す

テンシー「・・・ジェンさん、私が能力を封じられた場合の話をします」

ジェン「う、うん」

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倒れてるトム、カッと目を開ける
トム「ひゃああああああああああ!」

テンシー「!?」
ジェン「!」

絶叫しているトム

テンシー「あれは・・・」

ジェン「・・・倒したんだ。オレの呪いが発動してる」

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テンシー「これまで誰かに与えた苦痛を受けているのですね」

テンシー、ジェンの方を向く

ジェン「うん、テンシーちゃんの力はいったい・・・」

テンシー「私の能力は相手の意識を奪う力です」

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小刀が刺さっているジェンの太ももに手をあてるテンシー

ジェン「!」
青いエネルギーが太ももを包む

少し目がかすむジェン
ジェン「あまり痛みを感じなくなった」

小刀を抜いてジェンの太ももに包帯を巻くテンシー

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テンシー「私が放つエネルギー波は、どんなものでもすり抜けます」

ジェン「防御不可能の攻撃・・・」

テンシー「そして、エネルギー波に当たった生物は意識がなくなります」

ジェン「チート攻撃だ」

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テンシー「おそらく幻を見せる類の能力は、攻撃を受けて発動するタイプのものですね」

ジェン「!」

テンシー「私の攻撃を受けて、能力を発動させる前に気を失ったんです」

ジェン「なるほど。さっき、つくりだした剣は・・・」

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テンシー「あの剣は切れ味がありますけど、生物の体だけはすり抜けます」

エネルギーで青い剣をつくりだすテンシー

テンシー「斬る箇所によって大なり小なり意識を奪います」

青い剣を消すテンシー

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テンシー「通常の剣で致命傷になるような箇所を斬れば、それだけで気を失います」

ジェン(・・・前回の平衡感覚を狂わせる剣みたいなものか)

テンシー「エネルギー波をかわすような素早い敵には剣で対応します」

テンシー「大勢の敵や近づかない方がいい敵にはエネルギー波を放ちます」

ジェン「なるほど」

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テンシー「力の消費を抑えたい場合は弓で対応します」

ジェン「弓もつくれるんだ」

テンシー「他にもつくれますよ」

ジェン「いい能力だね」

テンシー「はい。私は敵も傷つけたくないので、そのような力が発現したんだと思います」

ジェン(テンシーちゃんらしい優しい力だ)

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ジェン「大人の姿になってるのはどうしてかな?」

テンシー「この姿に私がなった秘密は・・・!」
山の方を見るテンシー

一匹のゴブリンの姿が見える

ゴブリンE「よくも仲間を!」
怒りの形相でジェンたちに向かってくるゴブリンE

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ジェン「オレたちがやったんじゃないです」

ゴブリンCが生き返って起き上がる

ゴブリンC「本当に生き返れた・・・」

ジェンの傷口がなくなる

トムの死体を見るジェン

ゴブリンC「この方たちは我々を救ってくれたんだ!」

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〇異世界 山の中(昼)

3匹のゴブリンの遺体をジェンとゴブリンCとゴブリンEが運んでいる
ジェンの後ろを歩いているテンシー

涙ながらジェンとテンシーに感謝の言葉を述べているゴブリンC

前方にリーダーのゴブリンが立っている
テロップ『ゴブリン ガドルフ・バーバー』

ジェン(ゴブリンのメインキャラだ)

ゴブリンC「この人たちが我々を転生者から救ってくれたんです!」

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ガドルフ「感謝申し上げます」
深々と頭を下げるガドルフ

ゴブリンC「本当にありがとうございました!」

ジェン「いえ、早く新しい坑道へ移動した方がいいです」

ジェンとテンシーの体が消え始める
ジェン・テンシー「!」

感謝の言葉を聞きながら消えるジェンとテンシー

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〇草原(昼)

ジェンとテンシーが現れる
ロイ「よかった。二人とも無事で」

ジェン「マリフォードさん」

ルイス「・・・お疲れ」

樹木に寄りかかって眠っている幼女のテンシーの姿がジェンの視界に入る
ジェン「え!?」

大人の姿をした方のテンシーを見るジェン
ジェン「テンシーちゃんが二人!?」