女神様(多分)が俺の顔をみながらぽかんとしている。

「え、あ、え? 」

「俺が学校を出てから帰路を急いでいて、交差点で信号をわたっている際に、今までの不健康な生活の限界が来て、くらりと倒れそうになった所に信号無視の異世界転生トラックが突っ込んできて、死んだと。そしてここ神界に飛ばされたと。ここまでで何か間違ってるとこありますか? 」

「いや、ないですね……普通の人でしたら大騒ぎするなり、お前誰だとわめいたりする方が殆どでしたので、いつも通り丁寧に説明をしようとしてたのですが、まさか状況を完璧に理解してるとは思いもしませんでした」

お辞儀をしようとする女神様(多分)を慌てて止める。

「っと申し遅れましたね。私は異世界への転生者を選別する役割を任されている転生の女神・リーン・タントゥールス・ガナス。日本人からするとかなり長く感じると思いますのでお好きに呼んでいただいて構いません」

「俺はーーー」

「悠斗さんのお名前は知っているので大丈夫ですよ」

あ、そうか。さっきも俺の名前言ってたもんね。

女神様はやさり女神様だったか。
好きに呼んでいいとは言われたものの、どう呼べばいいのか困る。

流石にリーンちゃんとかはアカンだろうし。
ちょっと聞いてみよう。

「他の人達ってなんて呼んでたんですか? 」

「そうですね……印象に残ってるのだと【リーンタン】でしょうか。そこで区切るなんて変なお方だなと」

可愛らしく首をかしげる女神様に、心の中でツッコミを入れる。

多分それはタントゥールスのタンで区切ったのではなく、語尾の【たん】だろうと。

リーンたん、か。いや可愛らしいけど! 流石に恐れ多いというかなんというか。

「女神様はそれには納得したんですか? 」

頷く女神様。

「では俺は女神様の事をリーン【たん】と呼んでもいいですか? 」

「……? 構いませんが。先程のと何か少しだけ【タン】の発音が違うような」

不思議な顔をして訝しんでいたが、言質をとったからには、これからはそう言われてもらう。

「リーンたん」

実に笑顔でそう言った。……やっぱなんか怖い。