茉優、木南先生、それ以外にも俺を妬み、邪魔だと思っているような人物。
あまりにいすぎて困る。
例えば、いつも俺の人気のおこぼれを貰っていたクラスメイトの佐々木だって、俺を陥れるためにやる可能性だってある。
何はともあれ、一週間で犯人を捜すしかない。
《ああ、授業ひま~(´;ω;`)》
《こういうときは暴露に限るな~》
午後も俺のSNSは更新され続けた。
相変わらず周囲の人間も触らぬ神に祟りなしといわんばかりに、俺の存在を無視し続けている。
《ということで午後はこの動画♪》
ぱっと更新された、俺のSNS。
そこに上がったのは、校内でも不良として有名な同級生の石川祐樹の動画だった。
《靴屋での履き逃げはやばいって~ただの万引きじゃん(*^-^*)笑》
石川が、とある個人経営の靴屋で万引きした姿を撮影した動画を俺は持っていた。
「ど、どうして、これが上がってるんだ……」
《サカキのアカウントマジで面白いことになってんな笑》
《自作自演》
《この高校どうなってんの……》
《チンパンしかおらんやん笑笑》
《店に通報しました》
次から次へとコメントが増える。
教室のざわめきが一気に濃くなる。
「え、待って……石川くんはやばくない?」
「榊のやつ、死にたいのか?」
どく、どく、心臓が、またもうるさい。
なんで、なんでこの動画が。
まさか、まさかだろ。
顔を上げて、「……おい、行平」と前に座るそいつに声を掛けようとした、その瞬間。
「おい! 榊っ!」
教室のドアが、蹴られるようにして思いっきり開かれた。
「あの動画! どういうことだよ! お前、上げないって言ったよな⁉」
派手な赤髪に細く剃った眉には、シルバーのピアスがついている。
「石川っ! 違うんだ、いまアカウントを乗っ取られててっ!」
「乗っ取られてんのに、なんでテメエが撮った動画が上がってるんだよ! オカシイだろうが!」
「うぐぅっ!」
教室に乗り込んできた石川が俺の胸倉を掴んで、思いっきり押した。
腰が机や椅子にぶつかって、ガタガタッと大きな音が鳴る。
「おいっ、やべえ! 誰か先生呼んで来い! 石川が乗り込んできたぞ!」
誰かが叫んでいる。
「おっ、れ、じゃないんだって!」
「あれだけ偉そうに動画は拡散しないからって、人を散々脅してコケにしたくせによぉ!」
「落ち着けよっ、いしか……っ」
バキッ、と骨が折れるような音が顔から鳴った。
頬を殴られたのだと気づいたのは、身体が床の上に倒れてからだった。
口の中に一気に血が広がる。
石川に殴られながら、薄っすら見えた先に行平がいた。
俺の席の前で立ち上がって、真っ青な顔でこちらを見ている。
長い前髪に隠れがちな眼鏡と、その奥に見える、怯えたように揺れる目。
あの日、この動画が撮影された日のことを思い出す。