―――い、おい。

「おい立て、榊! 貴様! 人をあの動画で脅した癖に、結局は晒すんだな⁉ あぁ⁉」

 何度も殴られ、蹴られ、踏まれ、それを繰り返されながら、『なんで、なんでだっ』と頭を守るように抱えた。
 石川は、SNSで有名な俺によく「可愛い子いたら紹介しろよ」と言ってきた。
 茉優や玲奈を紹介しろと言ってきたこともある。そのやりとりに辟易していた俺は、あの動画を使って石川を脅した。

〝石川、これ。何の動画かわかるか?〟

 そう言って。
 ただ、うんざりしていたんだ。この低能の相手に。
 もちろん、行平には手出しはするなとは言ったさ。だけどそれも、俺の気分で変わる。
 行平の学校生活は、俺の手中にあったはずだ。
 裏切らないように、今まで刷り込んできたはずだ。

「榊くん……やばいね」
「死ぬんじゃない?」
「先生たちは⁉」
「なんか電話対応に追われてるんだって!」
「えっ、でも早くしないと……」

 跳ねるように、身体が動く。
 その度に、ひそひそとした声が増え、クラスの女子たちが悲鳴を上げた。
 ぴこん、と音がする。ああ、誰かが動画を撮っている。
 やめろ、とるな、撮るな!
 こんな惨めな俺を、記録するな!
 なんとか瞼を開けば、行平がこちらを見下ろしているのがわかった。
 だがその顔は怯えるのか、そうでないのか。
 石川に殴られ過ぎたせいで視界がぼやけて、それはよくわからなかった。
 ただ、俺が行平を見下してきたような眼差しで、見下ろしているに違いないと思った。

「……っき、ひら……」

 お前か? お前が乗っ取ったんだろ?

「ああ⁉ もっとはっきり喋れや!」

 でなければ、石川の動画を。

「せっ、先生あそこです!」
「! コラァ、石川! 何やってるんだ⁉」

 誰が上げたって言うんだ。