兄との稽古、父との稽古が続き、僕は七歳に、兄は十歳になった。
そして――――
今日は祭りのために中央泉に村人達が集まっている。
祭りと言っても普段から行っている祭りではなくて、特別な祭り――――兄のための祭りだ。
祭壇の上には初めて見る神官衣装を身にまとった母さんがいる。
「汝、クレイ・ウォーカーに女神ノ祝福があらんことを」
綺麗な声が響き渡り、母さんの美しい金色の髪にも似た金色の輝きが兄に降り注ぐ。
僕は父と同じ黒髪なのだが、兄は母さん譲りの綺麗な金色の髪で、降り注ぐ光を受けてますます美しく輝きを放つ。
不思議な魔法のように兄の全身からオーラが溢れ、光りが収束して一気に周辺に光を放つ。
眩しすぎる程の光は、兄が特別な力に目覚めた事を示唆させる。
「クレイ。君の才能は――――――」
その場に集まった全ての人が母さんに注目する。
そう。今日は十歳になって受けられる『才能開花』の儀式の日だ。
十回目の誕生日から受けられる『才能開花』は、異世界『アルテナ』で生きる人々にとって人生を左右する最も大切な儀式である。
才能を開花させる事は二つの意味合いを持つ。
一つは、文字通り才能を得る事。
例えば、『剣士』という才能を得た人は、剣を扱うスキルを手に入れたり、剣を扱いやすいステータスに成長していく。
才能は何も戦闘職だけではない。
制作系の才能や普段誰しもが行う料理から色んな才能が存在する。
ただ、中でも戦闘系才能の方が優位であると言われている。
代表的なモノは剣士と魔法使い。
魔法使いはそれだけで優遇され、魔石を扱う仕事にも就けるので仕事の幅が広く、対魔物戦でも凄まじい活躍を発揮する。
それ程に大切な才能開花の儀式が本日、兄のために開かれているのだ。
誰もが母さんの言葉を息を呑んで待つ。
兄は母さんに向かって跪いて目を瞑って言葉を待った。
そして、遂に母さんが息を吸い込んだ。
「――――――勇者」
母さんの綺麗な声が村中に響き渡る。
家にある書籍で事前に調べがついているが、『勇者』という才能は全ての才能の頂点であり、誰もが憧れる才能である。
すぐに村中に歓喜の声が響き渡った。
ゆっくりと起き上がる兄さんは、先程とはまるで別人のような凛々しい顔でこちらを振り向いて深々と頭を下げた。
村人達から祝われていて、輝いている景色はどこか現実離れしたように、異世界に生きている僕ではなく前世で生きている僕が眺めているそんな感覚に陥って、立ち尽くしていた。
その時、背中を優しく押してくれる感触が伝わってくる。
隣で一緒に見守っていた父さんだ。
父さんは優しい笑みを浮かべて、笑顔で頷いてくれた。
僕は真っ先に兄さんに向かって走り出した。
「兄さん! おめでとう!」
「ユウマ――――ありがとう」
兄に花束を渡す。
花束を受けた兄はやはりカッコよくて、最高の才能を開花させた事も相まって僕にとってより高い憧れとなった。
その日は僕にとって最高に嬉しい一日となったのは言うまでもない。
だが、この事が、世界にとって、僕にとって、僕達家族にとって、この先起きるである大きな出来事になろうとは今の僕には知る由もなかった。
◆
次の日。
「僕も行きたい! お願い! 母さん! 父さん!」
僕はいま必死に父と母にしがみついている。
「ユウマ……君にはまだ早いぞ?」
「だって……だって…………僕も兄さんの晴れ舞台を見たいよ!」
僕が叫んでいるのは、兄の初めての晴れ舞台を見たいから。
「父さん。母さん。ユウマと連れていっていいんじゃない?」
「ん…………じゃあ、ユウマ? 一つだけ約束してくれる?」
母さんがしゃがんで僕と目線の高さを合わせてくれる。
真っすぐ見つめた美しい金色の瞳が僕の目を覗き込む。
「絶対に母さんの隣から離れない事。絶対に前には出ないこと。絶対に――――兄さんに何があっても助けに行かない事。いいね?」
「うん! 約束する!」
そう答えると真剣だった表情が緩んで笑顔で僕の頭を優しく撫でてくれた。
そして、僕も連れられ――――僕達家族は村人達と共に村の外の森に入っていった。
うちの村は田舎村で全部で十軒あり、僕も含めて計二十一名が暮らしている村だ。
不思議と村には鳥、動物、虫一匹すら見当たらなくて異世界はそうなのかなと思ったけど、実はそうじゃないらしくて、この村に入って来れないそうだ。理由は分からない。
村は片方に大きな山があり、大きな扉で塞がれている洞窟があり、別方面は全て森に覆われている。
母さんからは大人になるまで村の外、つまり森には絶対に入らないように約束しているので、森に入るのは今日が初めてだ。
森の中には怖い化け物がうろついていると聞いているので、それにもワクワクしている。
異世界なんだから化け物がいてもおかしくないよな。ここまで七年……中々長かった。
一体この世界の化け物はどういうものなのだろう。
僕は兄の背中を追いかける。
そして、遂に僕達の前に化け物が一体現れた。
「えええ!?」
村人達が身構える中、僕の情けない声が鳴り響く。
い、異世界の化け物って――――――こんなにデカいのおおおお!?
目の前には十メートルはくだらない大きさの二階建てのビルくらいの大きさの禍々しいオーラを纏った猪が現れた。
――【スキル〖上位鑑定〗が発動。】
---------------------
個体名:シャイコース
種 族:魔王種
弱 点:光
状 態:直系神の封印
スキル:
〖全属性耐性〗〖能力低下耐性〗
〖状態異常耐性〗〖精神異常耐性〗
〖即死耐性〗
〖身体能力上昇・神級〗〖耐性上昇・極級〗
〖二重詠唱〗〖高速詠唱・極級〗
---------------------
僕の目の前に不思議な透明の画面が出現した。
そして――――
今日は祭りのために中央泉に村人達が集まっている。
祭りと言っても普段から行っている祭りではなくて、特別な祭り――――兄のための祭りだ。
祭壇の上には初めて見る神官衣装を身にまとった母さんがいる。
「汝、クレイ・ウォーカーに女神ノ祝福があらんことを」
綺麗な声が響き渡り、母さんの美しい金色の髪にも似た金色の輝きが兄に降り注ぐ。
僕は父と同じ黒髪なのだが、兄は母さん譲りの綺麗な金色の髪で、降り注ぐ光を受けてますます美しく輝きを放つ。
不思議な魔法のように兄の全身からオーラが溢れ、光りが収束して一気に周辺に光を放つ。
眩しすぎる程の光は、兄が特別な力に目覚めた事を示唆させる。
「クレイ。君の才能は――――――」
その場に集まった全ての人が母さんに注目する。
そう。今日は十歳になって受けられる『才能開花』の儀式の日だ。
十回目の誕生日から受けられる『才能開花』は、異世界『アルテナ』で生きる人々にとって人生を左右する最も大切な儀式である。
才能を開花させる事は二つの意味合いを持つ。
一つは、文字通り才能を得る事。
例えば、『剣士』という才能を得た人は、剣を扱うスキルを手に入れたり、剣を扱いやすいステータスに成長していく。
才能は何も戦闘職だけではない。
制作系の才能や普段誰しもが行う料理から色んな才能が存在する。
ただ、中でも戦闘系才能の方が優位であると言われている。
代表的なモノは剣士と魔法使い。
魔法使いはそれだけで優遇され、魔石を扱う仕事にも就けるので仕事の幅が広く、対魔物戦でも凄まじい活躍を発揮する。
それ程に大切な才能開花の儀式が本日、兄のために開かれているのだ。
誰もが母さんの言葉を息を呑んで待つ。
兄は母さんに向かって跪いて目を瞑って言葉を待った。
そして、遂に母さんが息を吸い込んだ。
「――――――勇者」
母さんの綺麗な声が村中に響き渡る。
家にある書籍で事前に調べがついているが、『勇者』という才能は全ての才能の頂点であり、誰もが憧れる才能である。
すぐに村中に歓喜の声が響き渡った。
ゆっくりと起き上がる兄さんは、先程とはまるで別人のような凛々しい顔でこちらを振り向いて深々と頭を下げた。
村人達から祝われていて、輝いている景色はどこか現実離れしたように、異世界に生きている僕ではなく前世で生きている僕が眺めているそんな感覚に陥って、立ち尽くしていた。
その時、背中を優しく押してくれる感触が伝わってくる。
隣で一緒に見守っていた父さんだ。
父さんは優しい笑みを浮かべて、笑顔で頷いてくれた。
僕は真っ先に兄さんに向かって走り出した。
「兄さん! おめでとう!」
「ユウマ――――ありがとう」
兄に花束を渡す。
花束を受けた兄はやはりカッコよくて、最高の才能を開花させた事も相まって僕にとってより高い憧れとなった。
その日は僕にとって最高に嬉しい一日となったのは言うまでもない。
だが、この事が、世界にとって、僕にとって、僕達家族にとって、この先起きるである大きな出来事になろうとは今の僕には知る由もなかった。
◆
次の日。
「僕も行きたい! お願い! 母さん! 父さん!」
僕はいま必死に父と母にしがみついている。
「ユウマ……君にはまだ早いぞ?」
「だって……だって…………僕も兄さんの晴れ舞台を見たいよ!」
僕が叫んでいるのは、兄の初めての晴れ舞台を見たいから。
「父さん。母さん。ユウマと連れていっていいんじゃない?」
「ん…………じゃあ、ユウマ? 一つだけ約束してくれる?」
母さんがしゃがんで僕と目線の高さを合わせてくれる。
真っすぐ見つめた美しい金色の瞳が僕の目を覗き込む。
「絶対に母さんの隣から離れない事。絶対に前には出ないこと。絶対に――――兄さんに何があっても助けに行かない事。いいね?」
「うん! 約束する!」
そう答えると真剣だった表情が緩んで笑顔で僕の頭を優しく撫でてくれた。
そして、僕も連れられ――――僕達家族は村人達と共に村の外の森に入っていった。
うちの村は田舎村で全部で十軒あり、僕も含めて計二十一名が暮らしている村だ。
不思議と村には鳥、動物、虫一匹すら見当たらなくて異世界はそうなのかなと思ったけど、実はそうじゃないらしくて、この村に入って来れないそうだ。理由は分からない。
村は片方に大きな山があり、大きな扉で塞がれている洞窟があり、別方面は全て森に覆われている。
母さんからは大人になるまで村の外、つまり森には絶対に入らないように約束しているので、森に入るのは今日が初めてだ。
森の中には怖い化け物がうろついていると聞いているので、それにもワクワクしている。
異世界なんだから化け物がいてもおかしくないよな。ここまで七年……中々長かった。
一体この世界の化け物はどういうものなのだろう。
僕は兄の背中を追いかける。
そして、遂に僕達の前に化け物が一体現れた。
「えええ!?」
村人達が身構える中、僕の情けない声が鳴り響く。
い、異世界の化け物って――――――こんなにデカいのおおおお!?
目の前には十メートルはくだらない大きさの二階建てのビルくらいの大きさの禍々しいオーラを纏った猪が現れた。
――【スキル〖上位鑑定〗が発動。】
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個体名:シャイコース
種 族:魔王種
弱 点:光
状 態:直系神の封印
スキル:
〖全属性耐性〗〖能力低下耐性〗
〖状態異常耐性〗〖精神異常耐性〗
〖即死耐性〗
〖身体能力上昇・神級〗〖耐性上昇・極級〗
〖二重詠唱〗〖高速詠唱・極級〗
---------------------
僕の目の前に不思議な透明の画面が出現した。