鈍色の亡霊

 さくらはスタンプを一つ送り、スマートフォンを閉じる。
 昼間に見た雄哉の笑顔が頭をよぎった。
 その純粋な笑顔は、さくらに自然と大輔を(ほう)彿(ふつ)とさせる。
(だい)(すけ)くんも、良く笑う人だったな……)
 そのままさくらの思考は大輔に埋め尽くされてしまう。
 そこで、さくらはまだ自分が高校時代から時が進んでいないことに気付いた。
 高校時代の大輔との短い思い出に支配されている自分を痛感した時、さくらは残念な気持ちと共に、まだ大輔を忘れていないと言う安心感に包まれる。
 複雑な感情を持ったまま、さくらは家事をするために立ち上がるのだった。