鈍色の亡霊

 そこまで思い至って、さくらは左右に首を振った。
 それから雄哉からのメッセージを開く。
『お疲れ様です! 今日はありがとうございました!』
 そう始まった文章の内容は、雄哉がさくらを誘うものだった。
 候補日をいくつか挙げてくれており、さくらの日程に合わせようとしてくれていた。
 さくらはその文面に思わず口元が緩んでしまう。
(大輔くんと、一緒ね……)
 高校時代にやり取りをしていた大輔も、感情が良く分かる文面をさくらに送ってきていた。
 さくらはそのことを思い出したのだ。
『前田さんとお茶できる日を、楽しみにしてます!』
 雄哉のメッセージはそう締めくくられていた。
 さくらはそこまで読むと、カバンからスケジュール帳を取り出した。
 さくらのスケジュールは基本的に仕事しか入っていない。そのため雄哉が指定してきた休みの日は全て空いていた。
 さくらはそれを確認したあと、すぐに雄哉へと返信をする。
『メッセージ、今気付きました』
 さくらは正直にそう書き始めた。それから雄哉の第一希望日に会える旨を書く。
 それはさくららしい、要点だけを書いた文章だった。
 メッセージを送信後、すぐに既読の文字がついた。
 その後しばらくしてから、
『当日、楽しみにしてます!』
 そう返事が返ってきた。