残されたさくらは雄哉に、
「本当に素晴らしいプレゼンでした。もしよろしければ、お昼、ご一緒しませんか?」
「えっ? いいんですかっ?」
 さくらからの誘いに、緊張の糸も解けた雄哉の声は明るい。
 二人は連れ立って、以前と同じように社員食堂へと向かうのだった。
「何にしますか?」
 社員食堂に到着したさくらはメニュー表の前で雄哉に尋ねた。雄哉は少し驚いた様子で、
「えっ?」
「注文の仕方、分からないでしょうから、私がまとめて注文しますよ」
「そんなっ! 悪いですよ!」
「大丈夫ですよ」
 雄哉はさくらの()(ぜん)とした言葉に押され、じゃあ……、とおずおずと自分が食べたいメニューを指さした。それは男性が好みそうな多めの肉が入った(しょう)()焼き定食だった。
「先に席、確保しておいてください。どこでも大丈夫なので」
「分かりました!」
 さくらからの言葉に雄哉はすぐに空いている席を探しにその場を去って行った。
 さくらはその後ろ姿を見送りながら、いつもの和食セットと雄哉の生姜焼き定食を一緒に注文する。