中にはさくらに憧れる後輩も現れたのだが、基本的にはみんな、さくらのことを高飛車だと思っていた。
 そのためさくらは、昼休憩も一人で過ごすことが多くなっていった。
 お局様に(にら)まれてしまったさくらは、女性社員との間に溝が出来てしまった。何だかんだ言って、女性はグループを組んで行動するものだ。そしてそのグループの頂点であるお局様に逆らえる若い女性社員もいないのだった。
 さくらの休み時間は休み時間でもなんでもなかった。
 同僚たちが楽しそうに会話をするのを尻目に、黙々と作業をし、人よりも多くの仕事量をこなしていた。
 こうした一人の時間を苦痛に感じることは、さくらにはなかった。むしろ一人で仕事をしている方がやりやすいとまで考えていた。
 チームで仕事をすることも多かったが、さくらはチームを組んだ男性社員から特別扱いを受けることもあり、それがまた、女性社員へ火に油を注ぐ行為になっていった。
 さくらはそんな環境の中、仕事を辞めるという選択肢だけは除外していた。
 一人で生きていく。
 さくらがそう決めた以上、仕事はなくてはならないものになったのだ。
(いつか、両親もいなくなる。私は一人になる……)
 だから、その日のために無駄遣いすることなく日々を過ごし、貯金をして仕事をする毎日だった。