お互いがお互いの存在に頼り、その先に見える未来は二人して共倒れするものではないのか、と。
 そう考えたとき、さくらはもう、誰かに恋をすることはないな、と思った。
(頼るのも、頼られるのも、うんざり)
 だったら、一人で生きていく。
 自分の人生は自分で歩む。
 誰かを必要としない。
 さくらはこう考えることで、大輔との楽しかった思い出を記憶の奥底に封印していくのだった。
 それからのさくらの人生は、さくらが心に決めた通り一人で歩むこととなる。
 さくらの決めたことを聞いた菜月は、何か思うところがあるような表情をしていたが、さくらの考えに何も口出しはしなかった。
 この考えを否定したら、さくらは大輔との思い出に押しつぶされて、壊れてしまうのではないかと思ったのだ。菜月はどんな形であれ、さくらが生きていくことを望んでいた。
 さくらが恋愛に対して臆病になっているだけだと、菜月には分かっていた。
 しかしさくらがこの考えでこれからも生きていってくれるのなら、と、菜月は言葉を押し殺していたのだった。
 さくらはこの考えに至ったとき、一人で生きていく決意表明も込めて、腰まであった長い髪をバッサリと切ってしまった。
(鏡を見るたびに、これで思い出せる)