そんな男子学生の中にも、さくらに直接アタックを仕掛ける猛者(もさ)がいた。さくらにラブレターを送るもの、直接思いの丈をぶつけるもの……。
 様々な形でさくらにアピールをする彼らは、ことごとく玉砕していくこととなる。
(今は、恋愛とか、考えられない……)
 さくらの心の中には、大学生活を送る上でも高校時代に過ごした(だい)(すけ)との思い出が強く残っていたのだった。その楽しいはずの大輔との思い出は、さくらをどんどん苦しめていった。
「前田さくらさん! まずは、お友達から、お付き合いしてください!」
「ごめんなさい」
 もう何度目になるか分からない告白を断るとき、さくらの胸に去来することがあった。
(この人たちだって、いつかは私を残していなくなってしまうかもしれない……)
 さくらは(いと)しい人を失う恐怖と、大輔への思いから、どんどん恋愛を遠ざけることとなったのだった。
 それだけモテるのに、彼氏を一人も作ろうとしないさくらは、女子学生たちからはいい目で見られることはなかった。ただでさえ容姿だけでも嫉妬の対象となり得る上に、告白してくる男子学生をことごとく振っていくのだから、女子学生たちは全く面白くなかった。