改めて大学のキャンパスをこうして見渡してみると、高校までの狭い空間とは大違いだな、と思わせてきた。
 各学部の校舎に広いグラウンド。
 校門をくぐった先にあるのは高校までの景色とは全く違うものだった。
 さくらは深呼吸をして、これまでの遅れを取り戻すべく歩みを進める。
 さくらがこうして大学に通うようになってから、さくらの存在感は高校の時以上に目立つものとなっていった。
 特に男子学生たちの視線はさくらに(くぎ)()けと言っても過言ではない。
 長くつやつやした黒髪は、大学生になった途端に派手な髪色をする学生たちとは違って目立つものだった。
(髪……、切ろうかな……?)
 さくらはどうも注目される原因がこの長い髪にあると思っていたようだ。
 しかしさくらの容姿は高校時代の()(わい)らしい雰囲気から、大人の気品を兼ね備えたものとなっていった。少女から脱したさくらの魅力に、男子学生たちが釘付けになるのも無理はないと言えよう。
 更にさくらは、どこかのサークルに属することもなかった。
 そう言った孤高の存在がまたミステリアスで、(たか)()(はな)(ほう)彿(ふつ)とさせる。
 遠巻きにさくらを見る男子学生の視線は熱かった。