「さくらはさ、松本くんがいなくなってからも頑張ってたよ。大学だって、進学できたもん。頑張ったよ。だから、休んでも誰も文句、言わない。ううん、私が言わせない」
 菜月の強い言葉に、さくらは大きく目を見張る。
 あぁ、自分はこんなにも友人に恵まれているのに……。
 何だか、ずっと引きこもっていた自分が恥ずかしくなっていった。
 カウンセラーとは真逆のことを言われているが、さくらにとっては何も知らないカウンセラーの言葉よりもよっぽど心に刺さる。
 菜月がいちばん、さくらと大輔を(そば)で見守ってくれていたのだから。
「ありがとう、なっちゃん。うん、私、休みが明けたら大学の講義に出るよ」
「さくら……」
(いつまでも、こうしているわけにはいかないもんね……)
 さくらの判断は身を切るような痛みをさくらに伴わせた。菜月にもその判断が苦しいものだと分かっていたため、言葉を続けることができない。
「無理、してない? 大丈夫?」
「大丈夫……、だと思う……」
 さくらの言葉は自信がないものだったが、それでもさくらは前に進むことを菜月に約束するのだった。
 ゴールデンウィークが明けた頃、さくらの姿は菜月との約束通り、大学にあった。カウンセリング以外の日にこうして大学のキャンパスを踏むのは初めてだ。