そう、昨夜、笑顔で別れたはずの大輔の姿が教室には見当たらなかったのだ。
「緊急集会がある。みんな、体育館に行け」
　担任の先生はそう言うと教室を出て行った。
　さくらのイヤな予感がどんどんと大きくなっていく。
「さくら、行こう？」
　さくらに声をかけてきたのは菜月だった。さくらは菜月と一緒に体育館に向かった。
　緊急集会で集められたのは、さくらたちの学年だけだった。
　みんな何事かとザワついていると、教壇に校長の姿が現れる。
「えぇ……、ご存(ぞん)知(じ)の生徒もいるとは思いますが……」
　校長は重い口を開いた。
　さくらはその先を聞きたくないと思いつつも、金縛りに遭ったように身体が動かなくなっていた。
　校長は言葉を続ける。
「君たちの友人である、松本大輔くんが、昨夜、交通事故のため、亡くなりました」
（は？）
　校長の言葉はさくらの脳まで届かない。
（亡くなった……？　嘘(うそ)……）
　校長の言葉は続いているが、さくらの脳裏には大輔が死んだと言う事実だけがぐるぐるとループしている。
　文字通り、金(かな)槌(づち)で直接脳をたたき割られたかのような衝撃に、さくらはそのままその場に倒れ込み、意識を失うのだった。
　さくらが気付いた時、そこは保健室だった。