大輔はさくらにそう言うと、さくらの頭に軽く手を置いた。さくらはその大輔の優しさに、コクコクと(うなず)くしかできない。
 さくらと出会って、大輔は大きく変わったように感じた。
 悪い先輩との付き合いも少なくなった。
 バイトも真面目に行っているようで、その真面目さを買われ、就職先も決まった。
 二人の未来は明るいもののように感じられていた。
「じゃあ、また明日!」
「うん、また明日」
 二人はいつものように別れの言葉を交わす。
 大輔は乗ってきた原付きバイクにまたがり、公園を後にした。さくらは去って行く大輔の背中が見えなくなるまで見送る。
 温かな気持ちのまま、さくらも家路へと就くのだった。
 翌日、さくらはいつものように登校した。しかし教室についたさくらは一つの違和感を覚える。
(なんか、みんながザワついてる……?)
 さくらが教室に入るやいなや、遠巻きからさくらを見てはヒソヒソと何かを話しているように感じる。
(何かあったの……?)
 さくらの胸にイヤな予感が膨れ上がる。
 しばらく騒がしい教室内にいると、担任の先生がやってきて朝のホームルームを始めようとした。そこでさくらは気付く。
(大輔くんが、いない……?)