そうして季節はあっという間に冬へと変わっていく。
　山々の色が変わり、茶色とグレーのような色で世界が覆われていく。
　どんよりとした天気が続く中、さくらたちの学校生活も残りわずかであった。
　さくらは志望校を絞り込み、そこへ向けて対策を行っていた。大輔はと言うと、バイク屋でアルバイトをしながら、就職先を探しているようだ。
「なかなかいいとこ、ねーんだよなぁ……」
　冬に入っても就職先が決まらない大輔は頭を抱え、焦っていた。その焦りがさくらにも伝わっていたため、
「大輔くん、焦ったらいいところ、なくなるよ？」
　そう言って大輔を落ち着かせることしか出来なかった。
　さくらと話している時だけ、大輔の焦りは一時的に止まる。しかし自分以外の就職希望者が続々と内定を貰(もら)っている中、自分だけ内定はおろか、就職の面接段階で落とされている始末だ。
「世の中って、上手くいかねーよーに出来てるんだな……」
　冬休みを目前に控えた帰り道。
　海からの強い風に吹かれながら歩いた帰り道で、大輔が思わずポツリと漏らしたこの言葉が、さくらはいまだに忘れることが出来ない。
　冬休みに入り、クリスマスを終えた頃。
　世間は年末ムードに入り、せわしない様子である。