「ちょっと！　さくらが困ってるでしょ？　野(や)次(じ)馬(うま)は散った、散った！」
　明るい声が教室に響いた。
　その声の主は、
「なっちゃん！」
　池田菜月の登場に、今まで大輔とさくらに絡んでいた男子たちが渋々といった様子で散り散りになる。
「全く！　男子ってすーぐ調子に乗るんだから！」
　菜月はさくらたちの隣に来ると、散っていく男子たちの背中を見やっていた。
「おはよう、なっちゃん」
　さくらは九死に一生を得た思いで、さくらに挨拶をする。さくらも笑顔で、おはよう、と返してくれた。
「松本くんも、おはよう」
「おはよう、池田さん」
　三人は朝の挨拶を交わし合うと、そのまま自分たちの席へと着いていく。
　三人が席について間もなく、担任の教師が現れて新学期のスタートを報(しら)せたのだった。