これはメッセージアプリのことだった。祭りの直後から、二人は頻繁にメッセージアプリを通じてやり取りをしていたのだが、ここ最近、大輔の返信が遅いのだ。
 あんなにも返事の早かった大輔が、この数日返信が遅いだけではなく、さくらからのメッセージに気付くことも遅くなっている。それがさくらには気がかりだったのだ。
 指摘された大輔はと言うと、
「いや、ほら……。課題! 夏休みの課題に追われてんの!」
 なんだか苦し紛れにも聞こえる大輔のいい訳に、さくらはこれ以上問い詰めるわけにはいかないと感じた。
「そっか……。課題、一緒にやる?」
 代わりにそう提案したが、
「さくらは進学希望だろ? 受験勉強の邪魔しちゃ悪いって」
 今度はしっかりとさくらの目を見て、大輔はそう言った。
 それが本心だと分かり、さくらはそれ以上何も言えなくなる。黙り込んでしまったさくらに、
「心配すんなって! すぐに終わるからさ!」
 大輔はそう言うと、ニカッと笑う。
 さくらは我ながら甘いと思いながらも、大輔のその笑顔を見ると何でも許せてしまえるのだった。
 こうして夏休みも終わりが近付いた頃だった。
 いつものようにさくらが朝、夏期講習に向けて登校するため、心臓破りの坂道を上っている時だった。