綿菓子屋、お面屋、金魚すくい――、様々な出店を冷やかしている間も、大輔はさくらの手を離そうとはしなかった。その大きな手のぬくもりに、さくらの鼓動は高鳴る。
 カランカランと()()を鳴らしながら、二人は夜の祭りを楽しんでいた。
「そうだ! この後、花火大会あるじゃん?」
「え?」
 一通りの出店を冷やかした後の大輔の言葉は、祭りの(けん)(そう)にかき消されてしまい、さくらの耳にまで届かなかった。しかし大輔は、
「花火、()にいこうぜ!」
 そう言うと、さくらの手を引いて海岸へと歩き出した。
 多くの祭り客が同じことを感じていたのか、歩道は花火会場へと向かう人たちでごった返している。
「人が多いね」
 さくらの言葉に大輔は、
「祭りはこうじゃなくっちゃな!」
 そう言って楽しそうに笑った。その横顔が夏の夜空と共にさくらの脳裏に焼き付く。
 そうして二人は花火大会の会場へとやってきた。
 程なくして、花火開始のアナウンスが辺りに流れる。すると大音量の音楽に乗せ、次々と海上から花火が打ち上がっていった。
「うわぁ……!」
 さくらはその迫力に、すぐに花火に(くぎ)()けとなる。
 ドーン! パラパラ……。
 ドーン! ドーン!