「――作戦を説明する」

 あれからシスター・クレアは何とか精神的に立ち直り、怪我もほぼ治癒した所で作戦会議となる。
 教会のど真ん中ででこんな事をするとは、最初に訪れた時は想像だにしなかっただろう。

「依頼主はいつもの『GA』――じゃなく、シスター・クレアだ。目標はフェルミナ・ストラトスを無事生還させた上でヴァンパイアの打倒する事」

 膝を組んで渋い日本茶を飲みながら司教シスターは語る。
 こんな教会……ヨーロッパ風なのに日本茶かよ、って突っ込むのは野暮というものか。

「単純な作戦だ。まずは私とクレア兄で正面から戦闘し、背後から忍び寄った笹瀬川ユウがフェルミナ・ストラトスを取り押さえ、その隙にシスター・クレアがヴァンパイアの力を封印する」



 シンプル過ぎて涙が出る作戦説明である。
 まぁ作戦を練る段階では全て上手く行きそうな気がする。誰だって失敗する作戦は練らないだろうし。


「まずクレア兄、お前はあのフェルミナ相手に通常通り戦い、良い囮になれ。周囲に注意が及ばないほど激昂させろ」
「……全力を尽くそう」
「その隙に笹瀬川ユウは背後に忍び寄り、一定時間拘束しろ。その一定時間はシスター・クレアがヴァンパイアの力を封印する。どの程度の時間が掛かる?
「えと、手早くやれば三十秒から四十秒で終わると思います」
「上出来だ。となると、笹瀬川ユウはフェルミナ・ストラトスの意識を初撃で大きく削り、ヴァンパイアの力を行使を難しくしろ」

 ……意識を奪えだなんて簡単に言ってくれる。
 漫画やアニメのように首を叩いただけで人間の意識が飛んでくれれば苦労はしない。多少怪我を覚悟して首に大打撃を与えるしか無い。
 

「さて、笹瀬川ユウが奇襲に失敗し、ヴァンパイアの力を全力で使われたら終わりだ。対処法は無い、死を覚悟しろ」
「……俺自身の失敗は死確定って訳ね。肝に銘じておくよ」
「ふっ」
 

 笑いながら言う事じゃねぇよ! と笹瀬川ユウはツッコミを入れる。

「そうなったらもう手段は無い。全滅する前にバラバラに逃亡する。そこでフェルミナ・ストラトスの魔力も尽きて終わりだ」

 この作戦が成功するのも失敗するのも自分次第か。比重が大きすぎるのは怖いが、何とかするしかないだろう。逆に言えば、自分さえ上手く行けばこの作戦は成功間違い無しだなのだ。

「後の問題点は、フェルミナ・ストラトスの状態だ。ヴァンパイア化してるから身体能力も人外の域まで向上している。同年代の少女だと思って加減すると死ぬぞ? 笹瀬川ユウ」
「……改めて分析すると、不確定要素だらけだな」

 

 確かに俺のエメラルド・グリーンの風の流れを肉眼で捉えていたようだし、身体能力の方にも何かしらの影響があるかもしれない。ヴァンパイア化は想定以上に大きい力を手に入れるらしい。想定外のパワーを出されたら呆気無く死んでいた。
 ……始まる前から不安になる作戦会議だったが、後は天の采配に期待するしか無いだろう。
 こうして、コッケン神父の弔い戦は幕を開けた