『綺麗な写真ですね』

 コメントを送ってきたのは、Tsukihitoという人だった。

 ごくたまに、瑠奈が投稿した写真にコメントが届くことがあるが、だいたいは通りすがりにひとこと残してくれるだけだったり、自分のアカウントのフォロワーを増やすための行動だったりする。

 Tsukihitoもきっとそうだろう。瑠奈は送られてきたコメントに特に返信はせず、SNSを閉じた。

 次の日も、瑠奈は夕暮れの空の写真をSNSに投稿した。学校帰りに自宅の近くの公園のそばを通ったとき、茜色の空にすーっと飛行機雲が一本通った綺麗な写真が撮れたのだ。

写真を投稿したあと、DMの受信マークがついていることにふと気づく。

 珍しいなと思いながらDMを開くと、送り主は、昨日瑠奈の投稿写真にコメントをしてきたTsukihitoという人だった。

『あなたの写真にとても興味を惹かれました。よかったら、お話しませんか?』

 DMに届いたメッセージを見て、瑠奈は眉をしかめた。SNSに写真を投稿するようになってから、過去にも数回知らないアカウントからDMが入ったことがある。そのどれもが、フォロワーを増やすための宣伝だったり、他のサイトに誘導するために無作為に送られてきたPRだったりした。今回もきっとその類だろう。そう思って、瑠奈はTsukihitoからのメッセージを削除した。

 それから数日後、瑠奈が投稿した夕暮れの写真にまたTsukihitoからのコメントが届いた。

『今日の写真もとても綺麗ですね』

 少し気味が悪いと思って無視したのだが、そこからは毎日のように瑠奈の写真にコメントが送られてくるようになった。