最近新しく撮ったばかりの写真をひととおり眺めたあと、スマホに入れてあるSNSのアプリを立ち上げる。それから、よく撮れている夕暮れの空の写真を二枚選ぶと、『帰り道の空』という簡単なコメントとともに、瑠奈は自分のSNSにアップした。
SNSへの写真投稿は、瑠奈が中学に入った頃から始めた。
投稿するのは基本的に、スマホに撮りためている夕暮れの空の写真だ。顔も名前もわからない誰かに向かって、自分が撮った写真を発信する。これといって執着するものがない瑠奈だったけれど、SNSへの投稿は死ぬ直前までやろうと決めていた。遺書のつもりだった。
瑠奈が投稿した写真に、全く交流のないアカウントから「いいね!」がいくつか押される。ほとんどが、通りすがりに瑠奈の写真を見た、顔も名前もわからない他人だ。
顔も本名も明かしていない瑠奈の写真に、同じようにどこの誰かもわからない他人が軽い気持ちで反応する。それくらいの浅い関わり合いは、気楽でちょうどいい。
何気なく、瑠奈の写真に反応をくれたアカウントのひとつを覗いてみると、その人は友達と旅行に出かけたときの写真や、お気に入りのコーディネート、新しくしたばかりのネイル、おしゃれカフェの映えるスイーツなど。きらきらと賑やかしい写真をたくさん投稿していた。どの写真からも、アカウント管理者のリア充感が滲み出ている。
瑠奈に絡んでくるカナミのSNSは、きっとこんな感じなんだろう。キラキラで溢れている投稿写真を少し引き気味に見つめながら、自分には縁遠いな、と瑠奈は苦いため息を吐く。
逃げるように自分のアカウントに戻ると、さっき投稿したばかりの写真にコメントがきていた。