「ねぇ、遊ぼうよ。カラオケ行って、クレープ食べて帰るプランなんだ。S高の友達、結構イケメンだよ。他に連れてきてくれるっていう友達も、写真見せてもらったらめっちゃレベル高かった。きっと、東条さんと並んだら似合うと思う」

 カナミがテンション高く話を続けるが、瑠奈にとってはどうでもいいことだった。

「行かない」

 瑠奈が冷たく言うと、耳元でペラペラしゃべっていたカナミが虚を突かれたように口を閉ざした。

「東条さんてノリ悪いよね」

 顔を引きつらせて笑うカナミの言葉に嫌味が含まれているのがわかる。話は終わったようなので、瑠奈は無表情でカナミから離れた。

 瑠奈が、自分にとって最も退屈で意味がないと思っている場所は学校だ。

「教育環境が整っているし、成績優秀なら大学への推薦も取れるから」

 そう言って中学受験を勧め、有名大学への進学率の高い私立の中高一貫校に瑠奈を押し込んだのは母親だった。

 会社経営をしている父は、瑠奈を可愛がって甘やかしたが、日々の仕事が忙しく、彼女の成績や学校生活にはあまり興味がなかった。

 母が中学受験を熱心に勧め始めた頃、瑠奈は十歳になっていて、定期的に見る予知夢の意味を理解していた。

 どうせ、わたしは十六歳までしか生きられない。それなのに、整った教育環境が何の役に立つんだろう。大学生になる前に、わたしはこの世から消える運命なのに。

「将来のため」と口うるさく言って、中学受験のための塾代に惜しげもなく大金を注ぎ込む母のことを、小学生の瑠奈は少し冷めた目で見ていた。

 定期的に見る夢が、十六歳で自分が死ぬことを示唆しているのではと思うようになってから、瑠奈は他人を遠ざけるようになった。両親に対しても本音は打ち明けず、心の距離を取って接した。

 友達は必要ない。家族との深い繋がりも持たなくていい。死ぬとわかっているのに、未来のある人たちと付き合ったって虚しいだけだ。