「わたしに未来を諦めるなって言ってくれたツキヒトさんは、どこにもいなかったんですか?」
「いるわけないよ」
一縷の望みをかけてつぶやいた言葉は、ツキヒトにあっさりと否定された。冷たく響いた彼の声に、迷いは感じられなかった。
「昼間に君に見せた写真は全部、生きていれば妹に見せてあげたかったものだ。俺は莉桜が苦しんだ分、できるだけ君を苦しめて復讐がしたかった。そのことで君が傷付こうが構わない。君にも君の未来にも、初めから興味なんてなかったよ」
瑠奈のことを真っ直ぐに見据えたツキヒトの唇の両端がゆっくりと引き上がり、綺麗な弧を描く。彼の狂気じみた笑みが、瑠奈を恐怖させる。
ツキヒトを信頼して、未来を信じて、随分と遠くまで着いてきてしまった。日が落ちたあとの、人気のない海岸。周囲は岩場ばかりで、瑠奈の竦んだ足では逃げられそうもない。絶望的だった。
今まで、人と深く関わることは避けてきたのに、なぜツキヒトのことを信用してしまったのだろう。