「妹は、夏休みで田舎から遊びに来て、事件の起きたビジネスホテルに泊まっていた。俺が仕事を終えたら一緒に夕飯を食べる約束をしていたのに、その約束は果たせなかった。俺たちは両親を早くに亡くしてるから、妹は俺にとって唯一の肉親だった。俺はあの事故で大切な人を奪われたのに、君のお父さんはホテルの評判が悪くならないようにってことしか考えてなかった。火事を起こしたのは雇っていた従業員なのに、そいつとの間にあったトラブルを隠蔽して、被害者みたいな顔で短い会見をしただけだった。妹は……、莉桜はこれから続いてくはずだった未来も希望も全部奪われて、苦しい思いをして死んでいったのに、そんなの納得いかないよね」
ツキヒトのふたつの目が、ギラリと鋭く光る。
日が落ちて、辺りが暗くなり、周囲が闇に包まれていくなか、ツキヒトの目だけがギラギラと瑠奈を射抜くように光っている。そのふたつの鋭い眼差しが、瑠奈に予知夢を思い起こさせた。
夢の中で誰かに命を奪われる直前、瑠奈は何度か、鋭く光る眼差しに体の自由を奪われたことがあった。その目に囚われると、夢の中の瑠奈は金縛りにあったように動けなくなり、逃げ出せなくなる。
あれは、ツキヒトの目だったのか。
「ツキヒトさんは、初めからわたしを殺すために近付いたんですか?」
どこからがツキヒトの作戦だったのだろう。
最初に瑠奈の投稿写真にコメントを送ってきたときから……。もしかするとツキヒトは、瑠奈のSNSにコンタクトをとってくる前から彼女のことを知っていたのかもしれない。