生まれて初めて食べるボリュームたっぷりのパンケーキは、口の中で蕩けそうなほど生地がふわふわで、生クリームが濃厚で、想像以上に甘かった。
パンケーキを食べながら、ツキヒトはこれまで撮ったという写真を見せてくれた。
プリントアウトされた写真は、撮った場所ごとに薄いアルバムに纏められていた。ほとんどのアルバムの表紙の裏側に「To. R」と小さく書かれていて、アルバムの表紙を捲るたびに不思議な記号だなと思う瑠奈だったが、すぐにその隣ページに貼られている写真に目を奪われてしまう。
たまに瑠奈がじっと食い入るように見つめる写真があると、ツキヒトはそれを撮った場所のことを詳しく話してくれた。写真のことを熱心に話すツキヒトは、DMでやりとりをしていたときの彼の印象そのものだった。
ツキヒトとたくさんの話をしながら、瑠奈は予知夢が外れてほんとうによかったと思っていた。同時に、予知夢に囚われていたからこそツキヒトと知り合えたのかもしれないという思いもあった。
十六年間、人との付き合いを避けて、死に向かう自分の人生に絶望してきたからこそ、こうして普通の十六歳の女の子としてツキヒトと向き合える時間が幸せで楽しい。
「ルナちゃんが気に入ってくれた写真を撮った海岸に、夕日を見に行かない? ここから一時間くらいで行けるから、日が沈んだあとすぐに引き返してくれば、それほど遅くならずに戻ってこられるよ」
駅前に車を停めてあるというツキヒトに誘われて、瑠奈は迷わず頷いた。