白い壁に飾られているよくわからないポップな雰囲気の絵や見た目の可愛い照明。木目調のテーブルと椅子。若い女性受けしそうな小物が全体的にちりばめられているみたいな店だった。瑠奈のクラスメートのカナミや瑠奈がSNSに投稿した空の写真に通りすがりに「いいね!」と反応してくれたリア充っぽい人が訪れそうな、そういう雰囲気だ。

 生涯訪れることなどないと思っていたような場所に足を踏み入れた瑠奈は、ツキヒトと一緒にテラス席に案内されたあとも、店のなかを呆気にとられたように見渡していた。

「何食べる? 口コミではスフレのパンケーキが人気らしいんだけど、ケーキもおいしいよ」

 瑠奈の正面に座ったツキヒトが、笑顔でメニューを差し出してくる。ツキヒトは、まるで店のメニューについてよく知っているような口ぶりだ。きっと、これまでにこういうオシャレなカフェに誰かを連れて来たことがあるのだろう。

 瑠奈とのDMのやりとりでは写真のことしか話してこなかったけれど、現実でのツキヒトは、瑠奈とは違ってリア充側の人種のはずだ。そう思いながら、瑠奈はメニューに視線を落としているツキヒトの整った顔をじっと見つめた。

 迷った結果、瑠奈は口コミで人気だというパンケーキとカフェラテを注文し、ツキヒトはチーズケーキとコーヒーを頼んだ。