待ち合わせ場所に着いた瑠奈がSNSのDMを送ると、ツキヒトからも同時に「着いた」というメッセージが届いた。
ツキヒトは白のTシャツに黒のパンツを履いていて、目印に黒のキャップを被って首には一眼レフのカメラをかけているという。ツキヒトの服装を聞いた瑠奈は、自分が彼と似たような格好をしてきていることに気付いておかしくなった。
今日はきっと、楽しい一日になる。
そんな期待を胸に抱きながら、キャップのツバに手をかける。
「ルナちゃん、かな……?」
そのとき、背の高い細身の男性が近付いてきて瑠奈に声をかけた。キャップのツバをあげて上を向くと、前に立った男性もかぶっていた黒のキャップのツバを指で持ち上げて瑠奈に顔を見せてきた。彼の首には黒の一眼レフカメラがぶらさがっている。
「こんにちは。ツキヒトです」
「こ、こんにちは。ルナです」
「こうして会うのは初めてだけど、なんか、はじめましてって感じではないね」
話しかけてくるツキヒトの声は、優しくて穏やかだった。
「そ、そうですね……」
少し緊張して言葉を詰まらせた瑠奈に、ツキヒトがにこっと笑いかけてくる。鼻筋が通っていて、涼しげな切れ長の目をしたツキヒトは、瑠奈の想像よりもずっとかっこいい人だった。モノトーンのシンプルな服装が似合っていて、大人っぽい。
カメラや自然現象についての詳しさから、眼鏡の生真面目そうな人を勝手に思い描いていた瑠奈は、目の前にいる大人の男性の姿にドキリとした。