東条 瑠奈には、物心ついたときから定期的に見る夢があった。それは、十六歳の誕生日に死ぬ夢だ。
死ぬときの経緯は様々で、誰かに高い場所から突き落とされたり、ナイフで刺されたり、必ず、他人から危害を加えられて命を落とす。
夢を見る度に死に方は変わるが、十六歳の誕生日に死んでしまうということだけはいつも同じだ。夢の中で両親に祝われながら十六歳の誕生日ケーキの蝋燭の火を吹き消したあと、突然場面が切り替わり、黒い人影に襲われる。恐怖を感じて目を覚ますと、手や背中にじっとりと汗を掻いている。
夢の中とはいえ、十六歳を迎える度に命を奪われるのはきつい。自分には未来がないと言われているようで、感覚がおかしくなる。いつの頃からか、瑠奈はこれが予知夢に違いないと思いこむようになっていた。
── わたしは、十六歳の誕生日に死ぬ。誰かに命を奪われる。そうでなければ、こんな夢を繰り返し見るはずがない。
この春高校に進学したばかりの瑠奈の十六歳の誕生日は、三ヶ月後に迫っていた。一年くらい前までは、予知夢を見てもまだ少しは楽観視していられたが、この頃はそうもいかない。
十六歳が近付くごとに、鬼気迫る感覚が増していく予知夢。自分はきっと、あと三ヶ月で死んでしまう。
大人になることはない、十六歳で死ぬとわかっている自分の人生に、いったい何の意味があるんだろう。虚しい気持ちで、瑠奈は今日もベッドから起き上がった。